【Case15:アシックスの場合】マケシリ〜マーケティング事例に隠された心理効果を知ろう〜

マケシリでは、最近ちょっと気になったマーケティング事例を独断と偏見でピックアップ!
弊社顧問で心理学博士の関屋 裕希さんになぜ気になっちゃうのかを心理学の観点から紐解いていただきます。

関屋 裕希 Yuki Sekiya
1985年1月31日生まれ/福岡県福岡市出身
せきや・ゆき/臨床心理士。公認心理師。博士(心理学)。東京大学大学院医学系研究科 デジタルメンタルヘルス講座 特任研究員。専門は職場のメンタルヘルス。業種や企業規模を問わず、メンタルヘルス対策・制度の設計、組織開発・組織活性化ワークショップ、経営層、管理職、従業員、それぞれの層に向けたメンタルヘルスに関する講演を行う。近年は、心理学の知見を活かして理念浸透や組織変革のためのインナー・コミュニケーションデザインや制度設計にも携わる。著書に『感情の問題地図』(技術評論社)など。
ホームページ:https://www.sekiyayuki.com

10月10日の世界メンタルヘルスデーに先駆けて、欧米圏のアシックスは職場におけるメンタルヘルス改善を訴えた動画を公開しました。さまざまなハラスメントが問題視されている職場環境において何が最もメンタルヘルスに影響を与えるのか、その原因と対策について動画にしています。

“The Desk Break(デスクワークに休憩を)”という動画で「オフィスで最もあなたのメンタルヘルスを損なう存在、それは嫌味な上司でも過度な業務でもなく“こいつ”だよ」とデスクを指します。長時間座りっぱなしでいることで健康が損なわれ、結果的にメンタルヘルスにも影響を及ぼしてしまう連鎖的な不幸について言及しています。

動画の後半では、かっちりとした服装の俳優のパンツやシューズがスポーツスタイルというアンバランスさもありつつ、健康を保つためにデスクを離れ運動をしようというメッセージを感じました。

ーかなり攻めた動画ですよね(笑)

前半では、かなり強い口調もつかっていますしね!
欧米圏のアシックスが世界メンタルヘルスデーにむけて制作した動画のようです。

ーこのブラックな感じは好む人はこのみそうですね

私も個人的にかなり好きです!日本では、YouTube上でしか展開されていないですね。

ーかなり意外性を多く含んだ動画ですよね。
強い口調で捲したてるように見えて、健康によいメッセージを伝えているという意外性が注目のポイントだと思います。いかにも固い上司のような人が立ち上がると、下は短パンにランニングシューズというのも面白いですよね。

短パン、インパクトあります!

ーそもそもメンタルヘルスデーの動画っぽくはないですよね。
よくある動画のイメージとしては、森の中とか、緑とか、リラクシングな雰囲気を感じるものが多い中でむしろ対局のイメージをぶつけてきていますよね。
人が「メンタルヘルスデー」と聞いたときにイメージする動画と違うため、それが最後までみてしまう仕掛けになっていると思います。

よくある、健康にいいことやりましょう!のような訴求だと、よく見るものだしわかってるよ。となってしまい離脱につながる可能性がありますよね。

ーただ、かなり攻撃的な印象を持たれる動画なので日本ではあまり受け入れられない可能性はありそうです・・・

賛否両論起こりそうです(笑)
このような印象を残すために違和感を持たせることをエスカレーター効果という手法があると以前お話いただきましたが今回のこの事例もエスカレーター効果が使われているんでしょうか。

エスカレーター効果
エスカレーター効果とは、心理学用語で、思い込みが覆されたときに生じる違和感のことを指します。エスカレーター効果の由来は、止まっているエスカレーターを上り下りする際に足が重いと感じてしまう現象です。これは、エスカレーターは動くものという思い込みが覆されたときに違和感が生じるためです。

ーエスカレーター効果はどちらかというと安全な違和感を想定しているものなので今回は真逆かもしれないです。
本来の効果を考えると、この動画は安全が担保されていない違和感なので対象は選んでしまうと思います。

ただ、昨今Webも発展し、情報過多な世情を考えるとこのくらい攻めた作りにしないと印象に残らなくなってきていますよね。このくらいのエスカレーター効果が必要なのかもしれません・・・!

アシックスの商品(出演者が一部身に着けている程度)の訴求もなく、ただ世界の人々の健康を願うブランドメッセージのこもった動画だったと思います!

関屋さん、本日もありがとうございました!

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