【Case32:オーディ・ヘルシンキ中央図書館の場合】マケシリ〜空間設計に隠された心理効果を知ろう〜

マケシリでは、最近気になった社会や空間デザインを独断と偏見でピックアップ!
今回は、フィンランド・ヘルシンキにある「オーディ・ヘルシンキ中央図書館」をテーマに、その空間に隠された心理効果を紐解きます。

関屋 裕希 Yuki Sekiya
1985年1月31日生まれ/福岡県福岡市出身
せきや・ゆき/臨床心理士。公認心理師。博士(心理学)。東京大学大学院医学系研究科 デジタルメンタルヘルス講座 特任研究員。専門は職場のメンタルヘルス。業種や企業規模を問わず、メンタルヘルス対策・制度の設計、組織開発・組織活性化ワークショップ、経営層、管理職、従業員、それぞれの層に向けたメンタルヘルスに関する講演を行う。近年は、心理学の知見を活かして理念浸透や組織変革のためのインナー・コミュニケーションデザインや制度設計にも携わる。著書に『感情の問題地図』(技術評論社)など。
ホームページ:https://www.sekiyayuki.com

今回は、フィンランド・ヘルシンキにある「オーディ・ヘルシンキ中央図書館」を取り上げます。単なる図書館ではなく、市民の“生き方”そのものを体現しているような空間設計が世界的に注目されています。

フィンランドの生き方を象徴する空間

──関屋さん、ヘルシンキ中央図書館の概念を超えていますよね。

関屋:そうですね。あれは本を読む場所というより、フィンランドのワークライフバランスを象徴する施設だと思います。

フィンランドでは、一般的に朝8時頃から夕方4時頃まで働く人が多い。
その後は家族と過ごしたり、自分の時間を楽しんだりする文化があります。
オーディは、その“働き方と生き方”がそのまま空間になったような場所なんです。

子どもも大人も自然に集まる1階・3階

──子どもスペースがとても印象的でした。

関屋:靴を脱いで上がるエリアがあって、そこでは本を読むだけでなく、滑り台や大きなブロックもある。読み聞かせも行われている。

特に面白いのは、夕方4時を過ぎるとお父さんの姿が増えることです。仕事を終えて、そのまま子どもと図書館で過ごす。職場と家庭が断絶していないんですね。

買い物もできるし、滞在もできる。
ワークとライフが自然につながっている空間です。

2階は「やってみたい」が実現する場所

──ミシンや3Dプリンタ、スタジオまであるんですよね。

関屋:ありますね。しかも誰でも使える。仕事で使う人もいれば、趣味として楽しむ人もいる。キッチンや録音スタジオ、ゲーム機、リビングスペースまである。

普通の図書館というより、市民のリビングルーム。
家でも職場でもない“第三の居場所”です。

そこでは副業のきっかけが生まれたり、新しい趣味が始まったりすることもある。
単なる読書施設ではなく、生活そのものを豊かにする場なんです。

「一人でこもる」より「誰かと使う」

関屋:面白いのは、ゲームやチェスなどが置いてあること。
公共施設にゲーム?と思うかもしれませんが、目的は交流です。

一人で完結するのではなく、誰かと同じ空間で時間を共有する。
人は、誰かと一緒に何かをする方が満足度が高まりやすい。

ヘルシンキは、それを自然に促す設計になっています。

日本なら「マイクロ・オーディ」という発想

──日本で応用するならどうでしょうか。

関屋:大きな施設をすぐに作るのは難しくても、“マイクロ・オーディ”のような発想はできます。

例えば

・学童や地域センターに制作スペースを足す
・図書館に小さな録音ブースを設ける
・町おこしとして多機能な共有スペースをつくる

日本では長時間労働が課題ですし、「職場でも家でもない場所」が少ない。
だからこそ、小さな第三の居場所を増やしていく発想は重要かもしれません。

まとめ:空間が、生き方をつくる

オーディ・ヘルシンキ中央図書館は本を読むだけの場所ではなく

・家族の時間
・趣味の時間
・交流の時間

それらを一つにした“生き方のモデル”でした。

ワークとライフを分けるのではなく、ゆるやかにつなげる。
空間設計が、国民のワークライフバランスを支えている。

ヘルシンキは、その象徴のような存在です。

──関屋さん、本日もありがとうございました!

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