【Case31:令和におけるバレンタインの場合】マケシリ〜マーケティング事例に隠された心理効果を知ろう〜
マケシリでは、最近ちょっと気になったマーケティング事例を独断と偏見でピックアップ!
弊社顧問で心理学博士の関屋 裕希さんになぜ気になっちゃうのかを心理学の観点から紐解いていただきます。

関屋 裕希 Yuki Sekiya
1985年1月31日生まれ/福岡県福岡市出身
せきや・ゆき/臨床心理士。公認心理師。博士(心理学)。東京大学大学院医学系研究科 デジタルメンタルヘルス講座 特任研究員。専門は職場のメンタルヘルス。業種や企業規模を問わず、メンタルヘルス対策・制度の設計、組織開発・組織活性化ワークショップ、経営層、管理職、従業員、それぞれの層に向けたメンタルヘルスに関する講演を行う。近年は、心理学の知見を活かして理念浸透や組織変革のためのインナー・コミュニケーションデザインや制度設計にも携わる。著書に『感情の問題地図』(技術評論社)など。
ホームページ:https://www.sekiyayuki.com
「あげないと評価が下がる?」という不安
──関屋さん、最近は「バレンタインが負担」という声も多いですよね。
関屋:ありますね。「あげないと感じが悪いと思われるかも」「あげたらお返しが面倒かも」といった、どちらにしても気を遣うイベントになっている側面はあります。
本来は好意や感謝を伝える日なのに、“評価が下がるかもしれない”という不安ベースで考えてしまうと、どうしてもネガティブな感情が先に立つ。これが負担感につながっているんだと思います。
チョコは「コンタクトのきっかけ」にすぎない
──では、どう考えると前向きになれるのでしょうか。
関屋:視点を変えてみることですね。バレンタインは「義務」ではなく「コンタクトのきっかけ」と捉える。
たとえば、普段あまり話さない部署の人に「いつもありがとうございます」と一言添えるだけでも関係性は変わります。チョコはその“きっかけ”にすぎません。
仕事は一人で完結するものではありませんから、関係性が少し良くなるだけでも日々のストレスは減りますよね。
「推しチョコ」は自己開示になる
──最近は“推しチョコ”という言葉も聞きます。
関屋:面白いですよね。自分の好きなブランドやキャラクターを選んで渡すことは「私はこういうのが好きです」というメッセージでもある。
これは自己開示の一種です。自分の好みを少し出すだけで、会話が生まれる。「それ好きなんですか?」「私もです」といった共通点が見つかると、距離は自然と縮まります。
義理や形式ではなく、“自分らしさを出す機会”と考えると、イベントの意味が変わりますよね。
バレンタインを「ジョブクラフティング」に使う
──仕事との関係で言うと、どう捉えられますか?
関屋:ジョブクラフティングという考え方があります。与えられた仕事そのものは変わらなくても「どう意味づけるか」「どう向き合うか」を自分で工夫することで、やりがいを高めるというものです。
バレンタインも同じで「やらされる行事」と思うか「関係性をよくするチャンス」と思うかで体験は大きく変わります。
イベントをうまく活用することで、仕事のやり方や関係性を少しだけ前向きに変えることもできる。そう考えると、捉え方次第で価値は変わります。
「あげない」という選択も尊重される時代
──とはいえ、あげない人も増えています。
関屋:それも自然な流れだと思います。今は「必ずやらなければいけない文化」ではありません。
迷ったときは「不安だからやる」のではなく「自分はどうしたいか」で決めること。ネガティブな理由ではなく、ポジティブな意図で選ぶことが大切です。
チョコを作る側にもできる設計
関屋:作る側の企業にも考えられることはあります。
「買ってください」「本命に」「義理でもぜひ」といった従来型のメッセージだけでなくどう使うと楽しいかまで提案できるかどうか。
たとえば、
・感謝を伝えるメッセージ付きパッケージ
・“推しチョコ”として自己開示しやすいデザイン
・お返しに困らない気軽さを前提にした商品設計
こうした工夫があると、バレンタインが“義務”ではなく“コミュニケーションツール”になります。
イベントそのものを煽るのではなく「どう向き合うと前向きになれるか」を設計する。
そこまで考えられるブランドは、これからより支持されていくと思います。
まとめ:令和のバレンタインは「選択」と「捉え方」
令和のバレンタインは「あげるべき日」ではなく「どう使うかを選べる日」
ネガティブに迎えることもできるし
・感謝を伝える
・自分を知ってもらう
・関係性を少しだけ良くする
そんな前向きな機会にもできる。
そして何より、あげないという選択も尊重される時代です。
イベントに振り回されるのではなく、自分の価値観でどう向き合うか。そこに、令和らしさがあるのかもしれません。
──関屋さん、本日もありがとうございました!