『「買う理由」の作り方』|高品質、その根拠は伝わる?
「心理学」「脳科学」関連の書籍を読んで、blogle編集部が感じたことをお伝えしていくコーナーです。
商品ページに「高品質」と書く。作り手にとっては、材料選びや検査にかけた手間を込めた一言です。けれど、その工程を知らない人は、何を見て品質を確かめればよいのでしょう。
ジェリー・オブライエンの『「買う理由」の作り方』を読むと、この一言の後ろにある仕事へ目が向きます。よい言葉を選ぶだけでなく、その約束を信じてよい理由まで伝えられているか。今回は、そこを考えます。
【『「買う理由」の作り方 どうしても欲しいと思わせる17のアイデア』著:ジェリー・オブライエン/訳:宮澤春子/ダイレクト出版/2024年刊/ISBN 9784866222035】

今回お伝えしたい結論を先に言ってしまうと
「伝えたい価値と、その価値を約束できる根拠を、ひと続きにする。根拠が足りないときは、形容詞を強めるより、確かめられる範囲へ言葉を戻すことから始められます」
よい商品だと伝える言葉と、そう言える理由
本書の中心にあるのは「ビコーズ」、つまり根拠です。著者は、顧客を定め、何を求めているかを知り、約束できる成果を考えたうえで、それを裏づける理由を示す流れを提案しています。
「私たちは何をしています」と説明することと、「あなたにどんな違いを届けられます」と伝えることは別です。さらに、届けたい成果を言うだけでも足りません。その成果を生む仕組みがあるのか。顧客は、そこを確かめたいかもしれません。
本書の根拠の候補には、独自の工程、技術、材料、試験の仕組みなどがあります。これらを読んでいると、根拠は実績の数字だけではないと気づきます。どのように作り、どこで確かめ、問題が起きたらどう対応するのか。普段の仕事の中にも、説明できることがあるはずです。
ただし、工程の存在だけで、あらゆる顧客の期待に応えられるわけではありません。ある試験で確認した性能には、その試験の条件があります。品質の話をするなら、材料や工程の名前を並べるところで止めず、何を確かめたのかまで伝えたいところです。
「よい」と言う役割と、「なぜそう言えるか」を説明する役割は違う。両方が揃って、読み手の検討材料になります。
根拠を探すと、仕事の仕方が見えてくる
本書の17の技法は、三つの種類に分かれます。独自の工程や試験などの「体系的な根拠」、専門性や第三者の評価などの「知覚される根拠」、保証やカスタマイズなどの「生み出された根拠」です。作る仕組みを示すのか、信頼を得る材料を示すのか、提供内容そのものを変えるのか。根拠を探す先は、実績資料の中だけではありません。
著者は17の技法をすべて試すよう勧めています。一方、編集部としては、検討の候補を広げることと、一つの販促物に全部を載せることは分けて考えます。示せるものが増えても、顧客の気がかりと離れていれば説明は長くなるばかりです。
納期を気にしている人に、素材の希少さを詳しく語っても、知りたいことは残ります。まず、その人に何を約束しようとしているのかに戻る。次に、約束を支える事実を探す。この順番なら、資料が豊富な会社だけの話にはなりません。
探してみて、掲載できる記録が見つからない場合もあります。それは、急いで数字を作る理由にはなりません。どの条件なら約束できるのかを現場に聞くか、約束自体を狭める。文章の修正が、提供内容を確認するきっかけにもなります。
本書は販売を改善するための実務書であり、紹介される手法を使えば必ず選ばれると証明したものではありません。編集部が持ち帰りたいのは、その強い言い切りより、伝える価値を業務の実体へ結び直す問いです。
根拠を探す作業は、宣伝の材料集めであると同時に、自分たちが何を約束できるかを確かめる作業でもあります。
「丁寧に対応します」を、どこまで説明できるか
「お問い合わせには丁寧に対応します」という文案を、説明の例として考えます。丁寧という姿勢は大切です。ただ、読み手が導入後の設定に困ることを心配しているなら、知りたいのは対応の中身でしょう。
担当者は設定画面を一緒に確認してくれるのか。メールで手順を送るのか。対応できる時間帯や、対象外の作業はあるのか。実際の運用を確かめると、「丁寧」という一語に預けていた内容が、少しずつ分かれてきます。
仮に、初期設定時に担当者が画面を見ながら案内する運用が本当にあるなら、「初期設定では、担当者が画面を確認しながら手順をご案内します」と書けます。これは本書の事例や実在企業の実績ではなく、編集部の文案です。回数や受付時間に条件があるなら、同じ案内の中で伝えます。
そのような運用がなければ、この文を採用しない。ここがいちばん大事です。コピーをよく見せるために、現場にない約束を増やすと、問い合わせを受ける人も困ってしまいます。
成果数値を根拠にする場合は、導入事例の削減時間を見出しにする前の確認も参考になります。数字も工程も、何をどこまで説明できるかを揃えてから使うものです。
商品やサービスの説明を見直すご相談では、現在の原稿と、その約束を支える資料を一緒にお持ちいただくと、伝えるべき内容を整理しやすくなります。
まずは、原稿にある形容詞を一つ選ぶ。その言葉を使ってきた理由を、仕事の記録や担当者の説明に戻って探してみる。伝わる言葉の手前には、既に続けてきた仕事があるのかもしれません。
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