【Case1:サッサ】マケシリ〜マーケティング事例に隠された心理効果を知ろう〜
マケシリでは、最近ちょっと気になったマーケティング事例を独断と偏見でピックアップ!
弊社顧問で心理学博士の関屋 裕希さんになぜ気になっちゃうのかを心理学の観点から紐解いていただきます。
第1回目は、掃除用品の「KINCHO サッサ」のプロモーションについて、深掘り!
皆さんは「サッサ」をご存知ですか?
「サッサ」はKINCHOでお馴染みの大日本除虫菊株式会社が誇る50年以上の歴史を持つ掃除用品。
どうやら「サッサ」の認知度には世代間で差があるようで、若者への認知度の低さをフックにした交通広告が話題になりました。
最近はこうした”人気”を売るのではなく、あまり人気がないことをあえて言ってアテンションを強める広告も増えてきていますよね。
こうした手法を取る際の効果や気をつける点について、関屋さんにお伺いしました!
関屋 裕希 Yuki Sekiya
1985年1月31日生まれ/福岡県福岡市出身
せきや・ゆき/臨床心理士。公認心理師。博士(心理学)。東京大学大学院医学系研究科 精神保健学分野 客員研究員。専門は職場のメンタルヘルス。業種や企業規模を問わず、メンタルヘルス対策・制度の設計、組織開発・組織活性化ワークショップ、経営層、管理職、従業員、それぞれの層に向けたメンタルヘルスに関する講演を行う。近年は、心理学の知見を活かして理念浸透や組織変革のためのインナー・コミュニケーションデザインや制度設計にも携わる。著書に『感情の問題地図』(技術評論社)など。
ホームページ:https://www.sekiyayuki.com
本日は掃除用品のサッサのプロモーションについてお伺いしていこうと思いますが、関屋さんご自身はサッサをご存知でしたか?!
ー初めて知りました!なんだか古くからありそうなデザインですね!
そうなんです、発売からは52年が経つ歴史のある商品のようです。
関屋さんのようにご存知ない方は多く、そのことをあえて伝えているプロモーションになります。
ーあまり知られていないけど、歴史があったり、効果のある商品は一度使ってみたい気持ちになりますよね。
最近はこういった自虐的な広告が増えてきているように感じます。
ーそうですね、隠しておきたいようなことをあえて曝け出すことで、お客様の共感や応援したくなる気持ちを引き立てるようなアプローチは以前より増えてきていますね。
ただ、自虐をすれば良いだけのシンプルな手法に見えて、落とし穴があるので注意が必要な手法です。
どのような注意が必要なのでしょうか?
ー以前同じような手法を使い、ユーザーから非難を浴びることになったのが、いきなりステーキの事例です。客数が減っていたところに「お客様のご来店が減少しております。このままではお近くの店を閉めることになります」との張り紙を掲出し、”上から目線”や”責任転嫁”の声が寄せられました。
確かに、少し投げやりな印象も受けますね。
ーそのような印象を受けてしまうのも無理はないですよね。
サッサといきなりステーキ、それぞれどのような点が良くて、どのような点が悪かったのでしょうか?
ーサッサは認知度をあげるために自らも努力しようとしていることが皆さんに好印象を与えている要因のように思います。自虐的ではあるけれど、改善をするために努力をしている様子も伺えますよね。
一方で、いきなりステーキの場合は言葉足らずで、とにかく困っているから助けて、と言っているようにも受け取られてしまいます。
似たような自虐でも、背景や経緯の伝え方一つで随分と印象が変わりますよね。
私たちがサッサをなんだか応援したくなってしまうのは、そういうことだったんですね
他にもこのような事例はご存知ですか?
ー過去にはBAKEや、最近だとPARMのプロモーションがサッサのケースに近いような気がします。
<BAKE>
BAKEはTwitterにてBAKEを買わない理由を募集するなどして話題になっていました。ただ嘆いたり、買ってくれ、とお願いされるのとはまた違ったアプローチで面白いですよね。
<PARM>
PARMは定番のチョコ以外のフレーバーを”じゃない方”と表現することで、あまり知られていないけど実は…と謙虚に存在をアピール。メッセージからも切実な思いがひしひしと伝わってきますよね。
このアプローチを使うときには、真摯に努力していることを伝えることや謙虚さがいかに重要か、よくわかる事例ですね、、
同じ自虐でも一歩間違えると悪印象を与えかねないということ、非常に勉強になりました!
本日はありがとうございました!