【Case39:ミスタードーナツの場合】マケシリ〜マーケティング事例に隠された心理効果を知ろう〜

マケシリでは、最近ちょっと気になったマーケティング事例を独断と偏見でピックアップ!
弊社顧問で心理学博士の関屋 裕希さんになぜ気になっちゃうのかを心理学の観点から紐解いていただきます。

関屋 裕希 Yuki Sekiya
1985年1月31日生まれ/福岡県福岡市出身
せきや・ゆき/臨床心理士。公認心理師。博士(心理学)。東京大学大学院医学系研究科 デジタルメンタルヘルス講座 特任研究員。専門は職場のメンタルヘルス。業種や企業規模を問わず、メンタルヘルス対策・制度の設計、組織開発・組織活性化ワークショップ、経営層、管理職、従業員、それぞれの層に向けたメンタルヘルスに関する講演を行う。近年は、心理学の知見を活かして理念浸透や組織変革のためのインナー・コミュニケーションデザインや制度設計にも携わる。著書に『感情の問題地図』(技術評論社)など。
ホームページ:https://www.sekiyayuki.com

2026年6月3日から期間限定で再販される、ミスタードーナツの人気ドーナツ「もっちゅりん」についてご紹介します。

「もっちゅりん」は、2025年に話題を集めたドーナツで、商品名にもなっている“もっちゅり食感”が特徴です。今回は既存の「もっちゅりんきなこ」「もっちゅりんみたらし」に加え、新フレーバー「もっちゅりんいちご」も登場。さらに第2弾の発売も予告されており、一度の再販で終わらせず、継続的に話題を生み出す設計になっています。

また、今回の再販では2026年5月14日からミスドネットオーダーで事前予約を開始。前回は人気の高さから商品を購入できなかった人もいたことを踏まえ、予約導線を早めに用意することで「また食べたい」というファンの熱量を、確実な購買体験につなげようとしています。

「もっちゅりん」という独自の食感ワードやキャラクター展開、新フレーバーの追加、事前予約の仕組みなどを組み合わせた本施策は、一度バズった商品を“再び話題化させる”だけでなく、長く愛される看板商品へ育てていくための再販戦略として注目されています。

「買えなかった」を改善する予約導線

──関屋さん、もっちゅりんは再販でもかなり話題になっていますよね。

関屋:そうですね。前回は人気が高すぎて、買えなかった人も多かったと思います。そうなると、次に再販されたときに「今度こそ食べたい」という気持ちが強くなりますよね。

今回おもしろいのは、ネットオーダーの予約導線を用意しているところです。アクセスが集中して待機画面が出るほど注目されているのは、それだけ期待値が高い証拠でもあります。

前回の課題を受けて、少しでも買いやすくしようとしているのが伝わります。完璧に全員が買えるわけではないとしても、「前よりは買えそう」と思えるだけで、ユーザーの不満はかなり和らぎます。

インフルエンサーが食べると“自分も食べたい”になる

──SNSで見かける機会もかなり多いですよね。

関屋:はい。インフルエンサーが一斉に食べていたり、レビューしていたりすると、それだけで「流行っているもの」として認識されます。

人は、みんなが話題にしているものを自分だけ知らない状態に不安を感じやすいんです。
特に若い世代は、学校やSNSの中で「それ知ってる」「食べたことある」という共通体験が会話のきっかけになることも多い。

だから、単に「おいしそう」だけではなく、「自分も話題についていきたい」という気持ちが購買の後押しになります。

同調心理が「食べて安心したい」を生む

──もっちゅりんって、食べること自体が一種の参加になっていますよね。

関屋:そうなんです。これは同調心理がかなり関係していると思います。

同調心理とは、周りの人と同じ行動をとることで安心したり、仲間から外れたくないと感じたりする心理のことです。「みんなが食べている」「SNSで何度も流れてくる」「友達も話している」となると、自分も食べておきたくなる。

行動のモチベーションとしては「食べたい」よりも、「知らないままでいたくない」「取り残されたくない」という気持ちの方が強く働くこともあります。

麻辣湯ブームにも通じる“自分ごと化”の強さ

──最近だと、麻辣湯のブームにも近いものを感じます。

関屋:ありますね。麻辣湯も、具材を自分で選べる楽しさがありますよね。
SNSでは「私の麻辣湯レシピ」として投稿できるので、ただ食べるだけではなく、自分らしさを出せる。

もっちゅりんも同じで、食べた感想や写真をSNSに載せることで、流行に参加している感覚が生まれます。
商品そのものだけではなく、「それを食べた自分」まで含めてコンテンツになるんです。

今のヒット商品は、味や品質だけではなく、SNSでどう共有されるかもかなり大事になっています。

再販は“改善”と“期待感”のバランスが大切

──今回の再販は、ただ同じ商品を出しただけではないんですね。

関屋:そうですね。前回の反応を見て、予約導線を整えたり、新しいフレーバーを追加したりしている。
ただ再販するだけではなく、「前よりよくなっている」と感じさせることが大切です。

ファンからすると、「また出た」だけではなく、「今度は買えるかも」「新しい味も試したい」と思える。
この改善の積み重ねが、単発の話題で終わらせず、長く愛される商品に育てていくポイントだと思います。

まとめ

もっちゅりんの再販施策は、単に人気商品をもう一度売るだけではなく、SNS時代の消費者心理をうまく捉えた事例でした。

話題になった商品を見て、「自分も食べてみたい」と思う。
みんなが知っているものを自分だけ知らないことに不安を感じる。
そして、食べることで流行に参加できたような安心感を得る。

こうした同調心理や「取り残されたくない」という気持ちが、もっちゅりんの再販をさらに盛り上げているのだと思います。

商品そのものの魅力に加えて、買うまでの体験やSNSで共有したくなる空気まで設計されている。
もっちゅりんは、いまの時代らしいヒット商品の作り方を示している事例といえそうです。

──関屋さん、本日もありがとうございました!

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