書籍紹介 執筆者:blogle編集部

【なぜ「あれ」は流行るのか?】あの商品は、なぜ誰かに話したくなるのか?

【なぜ「あれ」は流行るのか?】あの商品は、なぜ誰かに話したくなるのか?

「心理学」「脳科学」関連の書籍を読んで、blogle編集部が感じたことをお伝えしていくコーナーです。

今回は「なぜ、あの商品やサービスは、誰かに話したくなるのか?」というテーマでお話したいと思います。

このテーマは【『なぜ「あれ」は流行るのか?』著者:ジョーナ・バーガー】に書かれている内容からインスピレーションを受けました。

なぜ「あれ」は流行るのか? 書籍表紙

今回お伝えしたい結論を先に言ってしまうと

「口コミや話題は、偶然や運だけで生まれるものではない」

「人が思わず誰かに話したくなるのには、いくつかの共通した仕組みがある」

ということです。

私たちは、何かが流行っているのを見ると「たまたま運が良かったのだろう」「たくさん広告を打ったのだろう」と考えてしまいがちです。

しかし本書を読んでいると、話題になるものの裏側には、人が誰かに伝えたくなる理由がちゃんと隠れているのかもしれない、と感じます。

口コミを生む六つの原則「STEPPS」という考え方

本書では、人が何かを人に話したくなる背景には、六つの共通した要素があると語られています。

著者はそれを、それぞれの頭文字をとって「STEPPS(ステップス)」と呼んでいます。

ソーシャル・カレンシー(人に自慢したくなる話題)、トリガー(思い出すきっかけ)、感情(心が動くこと)、人目に触れること、実用的な価値、そして物語。

六つすべてを一度に語ると教科書のようになってしまうので、ここでは私が読んでいて特に「なるほど」と感じたいくつかについて、お話ししてみたいと思います。

人は「自分を良く見せられる話」を話したくなる

本書の中で最初に心に残ったのが、「ソーシャル・カレンシー」という考え方です。

これは、人は自分を少し良く見せられるような話題を、人に共有したくなる、という考え方だと語られています。

言われてみれば、私たちが誰かに話したくなるのは、「これを知っている自分」「こんな面白いものを見つけた自分」を、そっと感じてもらえるような話が多いのかもしれません。

珍しいお店を見つけた時、意外な豆知識を知った時、思わず誰かに伝えたくなるのは、その情報が自分をちょっと素敵に見せてくれるからなのだと思います。

つまり、話題になるものは、話す人にとっての小さな価値を含んでいるのだと本書は教えてくれます。

人が話したくなるのは、その話を通じて「話している自分」も少し良く見えるからなのかもしれません。

「思い出すきっかけ」があるから、話題になる

次に印象に残ったのが「トリガー」という考え方です。

これは、日常の中にある何かが引き金になって、あるものを思い出し、つい話題にしてしまう、という考え方だと語られています。

どんなに面白い話でも、思い出すきっかけがなければ、そのまま忘れられてしまいます。

反対に、毎日の暮らしの中で自然と目に入るものと結びついていると、人は繰り返しそれを思い出し、口にするようになるのだそうです。

一度の大きなインパクトよりも、日常の中で何度もそっと思い出してもらえること。その積み重ねのほうが、長く語られる話題を育てていくのかもしれません。

心に残る話題は、強さだけでなく、思い出してもらえる「きっかけ」を持っているのだと思います。

感情が動くこと、そして物語に乗ること

もうひとつ心に残ったのが、「感情」と「物語」という二つの原則です。

本書では、心が大きく動いたとき、人はそれを誰かに伝えたくなる、と語られています。

驚いたこと、感動したこと、思わず笑ってしまったこと。冷静な情報よりも、感情が揺れた出来事のほうが、人から人へと伝わっていきやすいのだそうです。

そしてその感情は、多くの場合「物語」に乗って運ばれていきます。

私たちは、ただの事実やデータよりも、誰かの体験や物語のかたちになった話を、覚えていて、また誰かに話したくなるのだと思います。

情報そのものよりも、それを包む物語のほうが、人の心に残り、次の人へと手渡されていくのかもしれません。

人は理屈で覚えるのではなく、感情の動いた物語とともに、その話を運んでいくのだと思います。

ここまでは本の話ですが、この「人が話したくなる仕組み」という視点は、企業のマーケティングやコミュニケーションにも、そのまま通じるように思います。少しだけ、仕事の話にひきつけて考えてみます。

blogle視点
明日から使える、マーケティングのヒント
本から得た「人が話したくなる仕組み(STEPPS)」の視点を、企業のコミュニケーション課題にどう活かすか。ここからは、ブログルらしく仕事の話にひきつけて考えます。

「語られる理由」を、あらかじめ商品やメッセージに埋め込む

本書を読んで強く感じたのは、口コミは「起きたらいいな」と待つものではなく、あらかじめ「語られる理由」を設計しておけるものだ、ということでした。この視点は、商品やブランドのメッセージづくりにそのまま活きるように思います。

たとえば飲食店であれば、「おいしい」という価値はもちろん大切ですが、それだけでは、お客さまがわざわざ誰かに話す理由にはなりにくいかもしれません。そこに、思わず人に伝えたくなる小さな物語——なぜこのメニューが生まれたのか、どんな想いで作られているのか——が添えられていると、お客さまは「これ知ってる?」と、自分の言葉で語りやすくなります。ソーシャル・カレンシーの視点で言えば、それを話すことでお客さま自身も「いいお店を知っている人」になれる。つまり、お客さまが語りたくなる理由を、商品やメッセージの中にあらかじめ用意しておくのです。

大切なのは、「うちの商品はすごい」と自分から言い切ることではなく、お客さまが自分の言葉で語れる素材を、そっと手渡しておくこと。語りたくなる物語がひとつあるだけで、その先の広がり方は変わってくるのかもしれません。

これからのメッセージづくりでは、「どう伝えるか」だけでなく「どう語ってもらえるか」まで考える視点が、ひとつの切り口になりそうです。

「思い出してもらう仕掛け」を、日常のどの接点に置くか

もうひとつ活かせそうなのが、トリガー——思い出してもらう仕掛けの考え方です。どんなに良いサービスでも、必要な瞬間に思い出してもらえなければ、選ばれる機会そのものがなくなってしまいます。だからこそ、お客さまの日常のどの接点で思い出してもらうかを、あらかじめ考えておくことには意味があるように思います。

たとえば、ある地域のクリーニング店であれば、「衣替えの季節」という、多くの人が毎年必ず通る瞬間と自分たちのサービスを結びつけておく、という切り口が考えられます。季節の変わり目に自然と思い出してもらえる言葉や接点を用意しておけば、そのタイミングが来るたびに、お客さまの頭の中にそっと浮かびやすくなります。一度きりの大きな広告よりも、日常の中で繰り返し思い出してもらえる小さなきっかけのほうが、長く効いてくるのかもしれません。

こうした視点は「たくさん宣伝する技術」というより、お客さまの暮らしのどの瞬間に寄り添えるかを考える姿勢に近いのだと思います。そして、思わず誰かに話したくなる、思い出して口にしたくなる——その連鎖の起点にあるのは、多くの場合、心が少し動いた前向きな体験です。私たちblogleが大切にしている「勇気づけ」——関わる人が、誰かに良い話を届けたくなるような温かい体験を生むこと。それは、本書の語る「伝わっていく仕組み」と、どこかで同じ方向を向いているように思うのです。

広める前にまず、「思わず誰かに話したくなる体験」をどう生むか。その一歩が、自然な広がりの起点になるのかもしれません。

おわりに

『なぜ「あれ」は流行るのか?』は、口コミや話題を「運任せのもの」から「少しずつ育てられるもの」へと捉え直す視点を、そっと手渡してくれる一冊です。

思い返せば、私たちが誰かに何かを話すとき、その裏側にはいつも、心が動いた瞬間や、伝えたいと思えた理由があるのだと思います。

誰かが誰かに、思わず良い話を届けたくなる。その小さな連鎖の始まりに、そっと心を配ること。それが、人と人のあいだに温かい広がりを生んでいくのだと思います。

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