ナレッジ・ノウハウ 著者:blogle編集部

導入事例インタビューの準備|人・数字・公開範囲

導入事例インタビューの準備|人・数字・公開範囲

導入事例インタビューの準備では、質問を作る前に「誰に話を聞くか」「数字をどこまで確かめられるか」「何を公開できるか」を揃えると、取材の目的がはっきりします。

協力してくれるお客様が見つかり、取材日も決まった。けれど、窓口の方は導入を決めた経緯を知らず、現場の方は成果の数字を持っていない。こうした行き違いは、質問を増やすだけでは埋まりません。

初めて事例制作を担当するBtoB企業のマーケティング担当者に向けて、取材前の調整を具体化します。この記事で手元に残るのは、顧客に送る確認メールの文例です。人・根拠・公開範囲を先に揃え、見込み客が自社に当てはめて読める事例へつなげます。

質問より先に、「誰が何を知っているか」を揃える

取材の窓口、実際に使っている人、掲載内容を承認する人は、同じとは限りません。窓口の方に全部を答えてもらおうとせず、記事で伝えたいことに合わせて確認先を分けます。

たとえば、運用の変化を伝えるなら、日々その仕事をしている人の説明が必要です。選定理由なら当時の検討担当者、作業時間なら計測や集計の方法を把握している人。その人が全員、取材当日に同席する必要はありません。事前に資料をもらう、後日一項目だけ確認する、という組み方もあります。

サイボウズが公開している現場サポートの事例では、アプリを作った商品開発部の担当者と、実際の作業を担う総務の担当者の双方が登場します。仕組みを変えた経緯と、使う側の変化を別々の立場から読める構成です。これは提供会社が編集した公開事例であり、ブログルが取材したものではありません。現場サポートの導入事例(サイボウズ)

この構成から参考にしたいのは、登場人数ではなく説明の分担です。「導入してどうでしたか」という一つの質問を全員に聞くより、何を誰に確かめるかを先に決めるほうが、相手も準備しやすくなります。

取材の目的から確認先を決める
記事で伝えたいこと 事情を知る人 事前に確かめたいこと
導入を決めた経緯 当時の検討・決裁に関わった人 検討時期、重視した条件、当時の資料が残っているか
日々の仕事の変化 導入前後の運用を知る人 変わった作業、残っている作業、使い始めるまでの負担
成果の数字 計測・集計の方法を知る人 対象、期間、比較条件、実測か見積もりか
社名・画面・発言の掲載 顧客側で公開を判断できる担当者 掲載可能な範囲と、最終原稿を確認する手順

上の表はブログルによる準備用の提案です。部署名を固定するものではありません。小さな会社なら一人が複数の役割を担いますし、担当者が替わっていれば、当時の判断は資料で補うことになります。

成果の数字は、何を数えた数字なのかまで聞く

事例に載せる数字には、対象の仕事、集計期間、確かめ方を添えます。「作業時間が減った」という数字だけでは、読み手が自社でも同じ変化を期待してよいのか判断できないからです。

先ほどの現場サポートの事例では、月全体の作業が約35時間から2.5時間になったという説明と、一人分の勤怠照合にかかる時間の説明が分けて書かれています。月全体の作業と、一回の照合は別の数字です。見出しにするときも、この範囲を落とせません。同事例の作業時間に関する説明

もう一つ、2014年1月取材のバルスの事例では、アプリを作った期間と、データ移行・連携まで含めた期間が区別されています。「2日」と「2週間」は矛盾ではなく、含む仕事が違う。この例は記述の読み方として挙げており、現在の製品仕様や導入期間の目安を示すものではありません。バルスの導入事例(サイボウズ、2014年1月取材)

取材前に欲しいのは、立派な報告書ではありません。たとえば「請求書の作成と確認にかかった時間。対象は経理担当二人。繁忙月を除いた導入前後の記録で比べる」という、数字の説明です。これは確認項目の例であり、実在企業の成果ではありません。

記録が残っていなければ、記憶による概算を実測値に変えて書かない。数字を公表できないなら、「二重入力していた項目が一度の入力になった」のように、確認できる仕事の変化を伝える方法もあります。ただし、その変化さえ未確認なら原稿の根拠には使いません。

導入と同じ時期に人員、業務量、手順も変わっていたら、その条件も確認します。変化のすべてを製品の効果に帰すと、実際に運用を整えた人たちの仕事まで見えなくなってしまいます。

「話してよい」と「公開してよい」を分けておく

背景を理解するために聞ける話でも、そのまま記事に載せられるとは限りません。録音、社名・氏名、写真、業務画面、数値、掲載先を、取材依頼の段階で分けて相談します。

GOV.UKのユーザー調査手順も、記録方法を事前に設計し、参加者の同意を得たうえで、中立な問いから具体的な経験を聞く流れを示しています。ただし、これは調査の進め方であり、販促記事の掲載許諾や日本での法的要件を保証する資料ではありません。公開については、双方の社内規定と承認手順を別途確認します。Using in-depth interviews(GOV.UK)

取材中に「そこは非公開で」と言われた話は、記事の都合で押し戻さない。非公開部分を除いて何を説明できるか、企画のほうを調整します。録音への同意が、音声や発言の公開への同意を兼ねるとも扱いません。

原稿確認では、事実の修正と、公開範囲の調整を分けてやり取りすると整理しやすくなります。数字の誤りは直す。選定理由が非公開になったら、その理由に依存していた見出しや結論も変える。消えた発言を、書き手の推測で補ってはいけません。

たとえば、比較検討の話が載せられず、日々の使い方だけが確認できた場合。その原稿は「選ばれた理由」の事例ではなく、「導入後の運用を知りたい人」に向けた事例として組み直せます。公開できる事実に合わせて読者と約束を狭める判断です。

取材前の確認メールは、相手が答えを分けられる形にする

依頼文は、取材で知りたいことと、掲載の相談を分けて書きます。以下はブログルが提案する文例です。実際に送信したメールや、お客様の回答ではありません。角括弧の箇所を埋め、不要な依頼を削って使う想定です。

件名:導入事例の取材内容・掲載範囲のご相談

[お名前]様

導入事例の取材をご検討いただき、ありがとうございます。今回は、[読者となる企業・担当者]が[判断したいこと]を具体的に考えられる記事を予定しています。

主に、[対象の仕事]の導入前後の変化を伺いたいと考えています。日々の運用をご存じの方にお話を伺えるか、ご相談できますでしょうか。別のご担当者への確認が必要な項目は、当日にお答えいただかなくても構いません。

成果の数字については、公表可能な範囲で、対象の仕事・比較した期間・集計方法を確認できれば幸いです。数字のご提供が難しい場合は、具体的な作業の変化を中心に構成します。

掲載先は[自社サイト内の掲載先]、予定時期は[時期]です。[社名・お名前・写真・業務画面など実際に希望する項目]の掲載可否もご相談させていただけますと幸いです。話を伺うための録音と、記事・画像の公開は、それぞれ確認いたします。二次利用を希望する場合も、用途を示して改めてご相談します。

初稿は[日付]頃にお送りします。事実関係と掲載範囲について、[確認期間]程度でご確認いただけるか、また、社内でほかに確認が必要な方がいらっしゃるか、お知らせいただけますでしょうか。難しい場合は日程を調整いたします。

お答えしにくい内容は無理に伺いません。ご負担の少ない進め方を相談できれば幸いです。

これは同意書や契約書の代わりではありません。社名が非公開なら、業種・規模・業務内容の組み合わせでも特定につながらないか確認する。画面が使えなければ、第三者情報を含まない説明図に替えられるか相談する。取材先に条件を飲んでもらうためではなく、双方が進められる範囲を見つけるための文面です。

なお、「確認期間を過ぎたら承認とみなす」という進め方は、この文例には入れていません。返事がなければ公開せず、確認状況と日程を調整します。

条件が揃わないときは、記事の約束を小さくする

事例を大きく見せるために足りない話を補うより、確かめられた範囲で一本を成立させる。取材準備で最後に必要なのは、この判断です。

導入を決めた人がいないなら、選定の比較は無理に扱わない。効果測定の記録がないなら、改善率を記事の主役にしない。反対に、現場の仕事の変化を具体的に聞けるなら、その仕事で困っている読者にとっての価値は残せます。

公開された事例から自社の顧客や売り方を考える段階では、顧客が選ぶ理由から競合分析を進めた実例も参考になります。この記事が担うのは、その材料となる事例を作る前の準備です。

次に取材を依頼する一社について、まず「誰の、どの判断に使ってもらう記事か」をメールの一文に入れてみる。そのうえで、話す人、根拠、公開を確認する人が揃うかを相談する。この順番なら、質問も取材時間も、その目的に合わせて絞れます。

自社の強みを伝える事例を作りたいけれど、誰を取材し、どこを記事の中心にするか迷う場合は、事例コンテンツの企画についてご相談いただけます

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