個別見積の料金ページで、顧客は何を比較できるか
会社案内を作りたい二人の担当者を、説明のために想定します。一人は掲載する原稿を社内で確認済み。もう一人は、営業資料がいくつもあるものの、何を会社案内に載せるか決まっていません。同じ「資料制作」を探していても、外へ頼みたい仕事は違います。
ところが、サービスサイトの料金欄に「個別見積」とだけ書かれていたら、二人とも同じ窓口へ進むしかありません。原稿を渡して制作を頼めるのか。内容の整理から相談できるのか。金額の前に、自分の依頼を受けてもらえるかが残っています。
料金を一律に出せないサービスでも、顧客が選べる依頼の形は示せる場合があります。この記事は、個別見積型BtoBサービスのサイト責任者に向けて、料金ページに何を比較材料として置くかを考えるものです。後半では架空の資料制作サービスを使い、二つの依頼経路をページ上に配置します。ブログルや紹介企業の提供条件・料金案内ではありません。
同じ完成物でも、顧客が頼みたい仕事は違う
参考になるのが、サイトエンジンのBtoBサイト制作ページです。料金表の後に、原稿作成を含む場合と含まない場合の見積例が分けて掲載されています。同じWebサイト制作でも、どの工程を依頼するかによって内訳が変わることを、現物として読めます。
ここで注目したいのは、二つの総額の差ではありません。原稿以外にイラスト・図表の項目も異なるため、差額をそのまま原稿作成の費用とは読めません。参考にするのは、完成するものの名前だけでなく、頼む工程を分けて説明していることです。同社は金額も公開しており、料金非公開の企業例として挙げているわけではありません。
この分け方を自社へ持ち帰るなら、「ライト/スタンダード/プレミアム」のようなプラン名を先に考える必要はありません。顧客がどこまで済ませていて、次のどこから手伝ってほしいのか。その違いから始めます。
たとえば原稿が揃っている人には、制作工程と、原稿を受け取れる条件が判断材料になる。内容がまとまっていない人には、整理する工程も依頼できるかが先に必要です。二人を「安く頼みたい人/高くてもよい人」と分けると、依頼内容の違いを予算の違いに置き換えてしまいます。
金額の問い合わせと、サービスの説明を分けて考える補助例としては、Slackの料金ページもあります。Enterprise+には価格を営業へ問い合わせる導線がありますが、機能の説明まで消えてはいません。価格が未提示でも、検討に使える情報は別に置ける。この点を参考にしています。
企業ページは2026年9月11日に確認しました。公開された説明の観察であり、各社の意図や問い合わせ・成約への効果を検証したものではありません。金額、仕様、契約条件は各社の最新案内で確認してください。
料金ページを、二つの依頼経路として描いてみる
冒頭の資料制作へ戻ります。ここでは、原稿を受け取ってデザインする仕事と、掲載内容の整理から始める仕事の両方を、実際に引き受けられる会社を仮定します。ページに置くのは価格の上下ではなく、「自分はどちらの頼み方に近いか」を見分ける案内です。
以下は依頼形態の案・架空例です。実在サービスの料金表ではありません。二つの仕事を受けられるか、何を確認してから見積もるかは、実際には営業・制作責任者の確認が先に必要です。
依頼形態の案・架空例
資料制作の料金ページに置く比較部分。価格・納期は未設定です。
今、資料づくりのどこまで進んでいますか?
掲載する原稿が決まっている
相談する仕事
確認済みの原稿をもとに、レイアウトとデザインを進める。
見積前に確認すること
原稿の修正も必要か、使える写真・図版があるか、希望する納品形式は何か。
案内先:原稿をもとにした制作の相談
何を載せるかから相談したい
相談する仕事
資料の読み手と使う場面を決め、既存資料から掲載内容を整理するところから始める。
見積前に確認すること
元になる資料の状態、内容を確認する社内担当者、追加で調べる必要がある情報は何か。
案内先:内容整理からの制作相談
どちらか決められない場合の案内先も残す:今ある資料の種類と、どこで迷っているかを伝えて相談する。機密資料を初回から送らせる設計にはしない。
料金ページ全体をこの二枠だけで作るのではありません。サービスの対象と個別見積である理由を説明したうえで、この比較部分を置き、最後に見積までの実際の手順へつなぎます。案内先は説明上のラベルです。未整備のフォームや窓口が、すでにあるようには載せません。
また、「原稿がある」を完成の判定にしてしまうと、次の行き違いが起きます。手元にメモはあるが、そのまま載せられる文章ではない。社内の確認が済んでいない。こうした場合にも左側を選ばせてしまうからです。この案では「掲載する原稿が決まっている」と書き、さらに修正の要否を確認対象として残しました。
右側にも制約があります。内容整理から相談したい顧客が、取材や調査まで全部含まれると読めば、受け手の想定とずれます。何を元に整理し、追加調査は別に確認するのか。営業が実際に受けている範囲に合わせて、掲載前に詰める部分です。
この配置案で顧客に渡せるのは、「どの工程から相談すればよさそうか」という判断です。予算に合うかは、金額の説明がなければ依然として分かりません。依頼形態を分けたから料金情報は不要、という話ではありません。公開できる目安や最低条件が社内で確定しているなら、適用範囲とともに示す余地があります。未確定なら、いつ・何を確認すれば金額が分かるかを実際の運用に沿って案内します。
分けられないサービスに、無理にプランを作らない
今回の二経路は、仕事の入口に違いがあり、それを顧客が事前に見分けられる場合の案です。すべての個別見積サービスを二つに分ける型ではありません。
最初の調査をしないと必要な工程が分からない仕事や、顧客ごとの事情が強く、原稿の有無では担当範囲が変わらない仕事もあります。その場合、「選びやすい料金ページ」のために存在しないプランを作ると、後の商談で説明を取り消すことになります。
分けられないなら、共通して行う最初の工程と、その後に何を判断するかを示す方が実態に合います。最初から支援全体を固定するのでなく、どこが確定し、どこからが個別判断なのかを見せる。同じ依頼を受けるのに名前だけ違うプランを増やす必要はありません。
自社で試す最初の一手は、営業と直近の異なる依頼を二件取り出すことです。社名や資料の機密内容を公開するのではなく、「顧客が済ませていた作業」と「自社が最初に引き受けた工程」を比べます。そこに違いがあり、顧客自身も問い合わせ前に見分けられるなら、料金ページで示す候補になります。違いが社内都合にしか見えないなら、別の切り分けを探します。
公開前には、その仕事の営業説明を知らない人に配置案を見てもらい、自分の状況ならどこへ相談するかを聞く。意図した案内先と違えば、枠の数を増やす前に、区切り方と言葉を直します。この確認は説明が伝わるかを見るもので、問い合わせ増加を証明するものではありません。公開後も、相談で範囲の説明をやり直したか、依頼内容が提供範囲と合っていたかを営業と確かめます。
FAQの回答そのものを整える工程は、BtoBサイトのFAQを、顧客が判断できる回答へ直す方法で扱っています。今回決めるのは、その回答を書く前の、顧客にどの依頼形態を選んでもらうかです。
料金が決まらないから、説明も止める。そこから一歩進むなら、まず金額以外に顧客が選べることを探す。ただし、選べないことを選べるように見せない。料金ページも、顧客と自社の仕事をすり合わせる接点として設計できます。自社のサービスをどの単位で見せるか迷う場合は、サービスの伝え方についてご相談ください。
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