『アイデアのつくり方』|参考事例だけ、集めていませんか?
「心理学」「脳科学」関連の書籍を読んで、blogle編集部が感じたことをお伝えしていくコーナーです。
他社のキャンペーンや展示会の写真を集めたフォルダ。参考になるものは増えたのに、自社の企画を考えようとすると、どこかで見た案ばかり浮かんでくる。
そんなとき、もう一つ成功事例を探す前に読み返したいのが、ジェームス・W・ヤングの『アイデアのつくり方』です。短い発想の手引きから、今回は最初の「資料を集める」という仕事に絞ります。ブラザーが公開しているラベルの試験情報を読み、完成した広告を眺めるのとは違う材料の拾い方を試してみます。
【『アイデアのつくり方』著:ジェームス・W・ヤング/訳:今井茂雄/解説:竹内均/TBSブリタニカ、1988年刊(現・CEメディアハウス)/ISBN 9784484881041】

今回お伝えしたい結論を先に言ってしまうと
「集めた事例の数より、手元にある材料の種類を見直す。他社が完成させた企画だけでなく、自社の商品や相手の暮らし・仕事について、何を知っているかを確かめたいのです」
手元の資料は、何についての資料か
ヤングは、アイデアを既にある要素の新たな組み合わせとして捉えます。その準備として集める材料には、大きく二種類があります。一つは、扱う商品や対象となる人について深く知るための具体的な資料。もう一つは、日ごろからさまざまな分野に触れて蓄える知識です。
本書では前者を「特殊資料」、後者を「一般的資料」と呼んでいます。特殊という言葉から珍しい情報を連想するかもしれませんが、ここでは、いま取り組む仕事に固有の情報を指します。
この区別で参考フォルダを眺めると、少し見え方が変わります。競合の展示写真は、競合が何を見せたかを教えてくれます。一方で、自社の商品がどんな作業で使われ、誰が何に困るのかは、それだけでは分かりません。
事例を集めること自体が悪いわけではありません。ただ、完成した見せ方をたくさん知ることと、自分たちの企画に必要な材料を揃えることは、少し違う。この差を意識するだけでも、次に開く資料が変わりそうです。
「よく調べた」の中身が、他社の完成形に偏っていないか。本書の資料の分け方は、その点検に使えます。
資料を集めた後にも、考える仕事が残る
本書は資料集めだけを勧める本ではありません。集めたものの関係を考え、いったん問題から離れ、浮かんだ案を現実の条件に合わせて育てるところまで扱います。この順番を守れば企画が成功するという保証ではなく、案が出ないときに準備へ戻る手引きとして読みたいところです。
ただ、資料集めにも終わりがありません。何でも集め続けるのではなく、「いまの説明では分からない、商品の違いは何か」と対象を決める。そこから製品の仕様や試験記録を読むと、探す材料が具体的になります。
ラベルの写真から、文字を守る構造へ
ブラザーのラミネートテープ情報を見ると、印刷面をフィルムで保護する構造と、水や油などに触れる利用環境が説明されています。ラベルの見た目を集めるだけではなく、何を、どんな場面から守る製品なのかを読める資料です。
さらに耐久性の試験情報には、砂消しゴム、1kgの荷重、50往復という擦過試験の条件が載っています。対象のテープでは印字品質に変化がなかったとする結果とともに、同社が設定した条件によるもので、保証値ではないことも記されています。
ここで拾いたいのは「丈夫そう」という印象ではありません。印字を保護する仕組み、確かめた条件、読める状態を確認した結果。この三つがあれば、宣伝の形容詞より具体的に、何が違うかを説明できます。
試験結果があっても、顧客の困りごとは残る
一方、この資料だけでは、検討中の顧客がどんな汚れや薬剤に困っているか、文字が読めなくなるとどの仕事が止まるかまでは分かりません。製品の条件を知る資料と、その人の仕事を知る資料は、別に集める必要があります。
だから、この試験を見た直後に「どんな現場でも文字が消えない」という展示やコピーへ飛ぶことは避けたい。自社の商品なら、顧客が受けている負荷と試験条件の対応を確かめ、伝えられる範囲を決めます。試験を見せることが目的ではなく、相手の判断に必要な違いを説明するためです。
別分野の事例へ戻るのは、そのあとでも遅くありません。見せたい違いが決まれば、比較してもらう、手順を追ってもらう、断面を見てもらうといった方法を探せます。他社ブースの外形を借りる前に、何を見えるようにするかが決まるのです。
顧客と何を確かめる展示にするかは、製品デモの準備へつながります。商品の仕様や営業資料はあるのに企画へ結び付かない場合は、ブログルに資料をお見せください。どの事実を伝える企画にするか、そこから整理します。
参考フォルダに、もう一枚きれいな展示の写真を足す。その前に、仕様書の小さな試験条件を読んでみる。案の材料は、目立つところにだけあるとは限りません。
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