【Case36:超早期退職について】マケシリ〜マーケティング事例に隠された心理効果を知ろう〜

マケシリでは、最近ちょっと気になったマーケティング事例を独断と偏見でピックアップ!
弊社顧問で心理学博士の関屋 裕希さんになぜ気になっちゃうのかを心理学の観点から紐解いていただきます。

関屋 裕希 Yuki Sekiya
1985年1月31日生まれ/福岡県福岡市出身
せきや・ゆき/臨床心理士。公認心理師。博士(心理学)。東京大学大学院医学系研究科 デジタルメンタルヘルス講座 特任研究員。専門は職場のメンタルヘルス。業種や企業規模を問わず、メンタルヘルス対策・制度の設計、組織開発・組織活性化ワークショップ、経営層、管理職、従業員、それぞれの層に向けたメンタルヘルスに関する講演を行う。近年は、心理学の知見を活かして理念浸透や組織変革のためのインナー・コミュニケーションデザインや制度設計にも携わる。著書に『感情の問題地図』(技術評論社)など。
ホームページ:https://www.sekiyayuki.com

最近では、2026年4月初旬のわずか1週間で退職代行サービスへの依頼が前年の約2倍に増加し、そのうち2割が新入社員だったという実態に注目。中には入社初日の昼休みに退職を決断するケースもあり、早期離職の加速が社会問題として浮き彫りになっています。

その主な要因として挙げられているのが、「労働条件と実態の違い」による採用ミスマッチです。勤務時間や給与、配属内容などが事前の説明と異なっていたことで不信感が生まれ、「だまされた」と感じた結果、早期退職につながるケースが多く見られます。また、面接中心の採用手法や、入社後のフォロー不足といった企業側の課題も指摘されています。

本記事は、こうした現象を単なる若手の忍耐力の問題として捉えるのではなく、企業と求職者の間にある構造的なズレや、採用・育成のあり方そのものを問い直す視点を提示しています。

「合わないなら辞める」が当たり前になった背景

──最近、入社直後に辞めるケースが増えていますよね。

関屋:そうですね。大きいのは「ミスマッチを無理に受け入れなくていい」という価値観が広がっていることです。

昔は「とりあえず我慢する」が前提でしたが、今は「思っていた仕事と違う」「転勤が受け入れられない」と感じた時点で、早めに離れる選択を取る人が増えている。これは良い悪いではなく、判断の基準が変わってきているんです。

学校と社会の“前提の違い”が大きくなっている

──価値観の変化というと、教育の影響もありそうですね。

関屋:かなりあります。今の教育現場は、丁寧に支援される環境が整っていますよね。

個人を尊重して、無理をさせない。そういう前提で育ってきている。

一方で、社会に出ると急に評価や成果が求められる。

場合によっては厳しい指導もある。この“前提の変化”が大きいんです。

昔は学校でも多少の理不尽があったので、ある程度の耐性が自然と身についていた。でも今は、そのギャップがかなり広がっていると感じます。

「指導」が受け取りづらくなっている

──最近は「叱る=パワハラ」と捉えられるケースも増えていますよね。

関屋:そうですね。本来は必要な指導でも、受け手によっては強いストレスとして感じてしまうことがある。

もちろんパワハラやセクハラはなくすべきですが、その一方で「指摘やアドバイスをどう受け取るか」という部分も難しくなっています。

結果として「耐える」か「辞める」かの二択になりやすい。中間の選択肢が取りづらくなっているんです。

企業側にもある「ミスマッチを生む構造」

──とはいえ、企業側の問題もありますよね。

関屋:もちろんです。入社前の説明と実態が違うと、それだけで信頼は崩れてしまう。

仕事内容や配属、働き方について曖昧なまま採用してしまうと、入社後にギャップが生まれてしまう。その結果「だまされた」と感じてしまい、早期退職につながるケースも多いです。

なので、企業側も「選ぶ」だけではなく、「正しく伝える」ことがより重要になっています。

「辞めるまでのスピード」が早くなった理由

──昔と比べて、辞めるまでの判断がかなり早くなっていますよね。

関屋:そうですね。退職代行の普及もあって、辞めるハードル自体が下がっています。

加えて「無理をしなくていい」「自分に合わない環境にいる必要はない」という考え方が広がっている。

その結果、違和感を感じた時点で早く判断する人が増えているんです。

まとめ:早期退職は「弱さ」ではなく、環境とのズレ

今回の早期退職の増加は、単純に「若者が弱くなった」という話ではありません。

・教育と社会の前提の違い

・ミスマッチが起きやすい採用構造

・指導の受け取り方の変化

・辞めるハードルの低下

こうした複数の要因が重なった結果として起きている現象です。

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