【選択の科学】選択肢が増えるほど幸せになれない理由
「心理学」「脳科学」関連の書籍を読んで感じた事をお伝えしていくコーナーです。
今回は「選択肢が増えるほど、私たちは本当に自由になっているのか?」というテーマでお話したいと思います。
このテーマは【『選択の科学 ― 自由と満足をどうデザインするか』著者:シーナ・アイエンガー】に書かれている内容からインスピレーションを受けました。

今回お伝えしたい結論を先に言ってしまうと
「選択肢が多いほど人は満足しそうに見えるが、現実は“選べない・迷う・後悔する”が増える」「幸せになるための選択とは、“数”ではなく、“基準”で決まる」
ということです。
「たくさんの選択肢がある方が良い」という考え方は、現代社会の前提になっています。
ネットショッピング、キャリア、恋愛、SNS──すべて“無限の選択肢”であふれています。
しかし『選択の科学』は、そんな常識に疑問を投げかけます。
選択肢が増えるほど、私たちは本当に幸せになっているのか?
それとも迷いが増え、満足感が下がっているだけなのか?
この本は、「人間はどう選び、なぜ後悔し、どの選択が幸福につながるのか」を科学的に解き明かしてくれる一冊です。
なぜ、選択肢が増えると迷いやすくなるのか?
選択肢が増えるほど、自由になれそうなのに「決められない」と感じる。
この矛盾を象徴するのが、シーナ・アイエンガーの有名な ジャムの実験 です。
スーパーで
- 24種類のジャムを並べた場合:興味を持つ人は多いが、購入率は3%
- 6種類のジャムを並べた場合:興味は少ないが、購入率は30%超
選択肢が多いと「楽しそう」に見えるのに、実際には選べなくなる。
理由はシンプルで、比較すべき情報が増えるほど、脳の負担が一気に高まるからです。
「どれが正しいのか」「後悔しないか」を考えるほど迷いが深まり、
結局「選ばない」か「選んでも満足できない」状況に陥ってしまいます。
選択の質を下げる3つの要因
選択肢が多いと迷いやすくなるだけでなく、決断の“質”そのものが下がることがあります。
『選択の科学』では、その背景にある3つの心理が紹介されています。
1. 選択肢の多さに圧倒される
人は選択肢が増えるほど「比較しよう」としてしまい、脳が疲れます。
その結果、深く考えずに“なんとなくの選択”をしてしまうことが増えます。
2. 完璧な選択を求めすぎるされる
「もっといいものがあるかも」と思うと、決めてもすぐ後悔してしまいます。
選択肢が増えるほど、“最適解”を追い求めてしまい、満足できなくなるのです。
3. 他人の評価を気にしてしまう
SNSや口コミの時代では、
「この選択で間違っていないか」
「周りからどう見られるか」
と考えやすく、選択の基準が“自分”から離れてしまいます。
少ない方がうまくいく──“制限”がもたらす自由
選択肢は多いほど幸せになれそうですが、
『選択の科学』が示す答えは その逆 です。
選択肢を“あえて減らす”ことで、私たちはむしろ 自由を取り戻せるといいます。
比較が減り、迷いが減る
選択肢が少なければ、重要なポイントにだけ意識を向けられ、
迷う時間が格段に減ります。
後悔しにくくなる
選択肢が多いほど「こっちの方が良かったかも」という“幻の選択肢”が増えます。
数を絞ることで、後悔のタネそのものが減るのです。
決断が早くなる
選択肢を少なくすることで、脳の負担が減り、
行動までのスピードが驚くほど上がります。日常のストレスも小さくなります。
アイエンガーは言います。
「選択肢を減らすことは、自由を奪うのではなく、むしろ取り戻す行為だ。」
“選ばない自由”を持つことで、人生の余白が増えるのです。
何を選ぶかより“どう選ぶか”が大切
『選択の科学』が教えてくれるのは、
多くの選択肢より、自分の“選ぶ基準”の方が大切だということです。
たとえば、
- 値段を優先するのか
- 時間を優先するのか
- 心地よさを優先するのか
- 成長を優先するのか
基準をひとつ持つだけで、選択は驚くほどラクになります。
完璧な選択は存在しません。
大事なのは、選んだあとに
「これは自分で選んだ」と納得できるかどうか。
選択肢が溢れる時代だからこそ、
自分の価値観に沿って“どう選ぶか”を大切にしたい。
『選択の科学』は、そんな気づきを与えてくれる一冊です。