ナレッジ・ノウハウ 著者:blogle編集部

コンセプトの作り方|会議で判断に使える一行へ絞る3ステップ

コンセプトの作り方|会議で判断に使える一行へ絞る3ステップ

「コンセプトを決めよう」と会議を開いたのに、最後に残ったのは「お客様第一の高品質なサービス」。これでは、企画を採るか捨てるかを決められません。

コンセプトは、耳ざわりのよい標語ではなく、顧客にどんな価値を約束し、何を選び、何を捨てるかを決める設計図です。この記事では、ブログルが実務で使う手順を、問いを変える→意味を組み立てる→一行に削るの3ステップに整理します。

コンセプトとは、価値をつくるための設計図

コンセプトとは、商品、体験、発信、営業などの判断を、一つの観点で貫く「価値の設計図」です。キャッチコピーが価値を伝える言葉だとすれば、コンセプトは価値そのものをつくるための基準です。

似た言葉と並べると、役割の違いが見えます。

言葉 答える問い 実務での役割
テーマ 何を扱うか 検討する範囲を示す
アイデア 何をするか 個別の打ち手を出す
コンセプト 誰に、どんな新しい価値をつくるか 打ち手を選ぶ基準になる
キャッチコピー どう伝えるか 価値を受け手の言葉へ翻訳する

コンセプトが機能しているかは、会議で確かめられます。二つの企画で迷ったとき、「どちらがコンセプトに合うか」で選べるなら設計図になっています。両方とも合う、または誰も説明できないなら、まだ飾りの言葉です。

上條憲二は、ブランドをロゴや広告だけの問題にせず、経営の方向、ブランド基盤、言語・デザイン、業務、社内外への展開、測定・運営までをつなぐ10ステップとして整理しています。この観点に立つと、コンセプトの役割は「良い一行を作ること」ではありません。経営の意志と顧客への約束を、現場が選択に使える基準へ変換することです。

企業ブランディングの全体像を先に整理したい場合は、会社全体の「約束と体験」という観点から確認してください。

作る前に、どのレイヤーの話かを決める

最初に、ブランド、事業、商品、コミュニケーションのどこを決めるのかをそろえます。ここが曖昧なままでは、商品名の会議に企業理念の話が持ち込まれ、結論が出ません。

レイヤー 主な問い 使う場面
ブランド 顧客と長く結ぶ約束は何か 会社・ブランド全体の判断
事業 誰に、何を約束し、なぜ実現できるか 新規事業・事業再設計
商品・サービス 買う本当の理由は何か 開発・改善・価格設計
コミュニケーション 相手の認識をどう変えるか 広告・営業・Web制作

一つの記事や会議で全部を決める必要はありません。今回は何を決め、どこから先は決めないのか。この境界を置くことが最初の仕事です。

問い・意味・一行化の3ステップでコンセプトを判断へつなぐ図
問いを変え、意味を組み立て、判断に使える一行へ削った後、実際の選択で試す。

ステップ1|答えを探す前に、問いを変える

凡庸なコンセプトは、言葉のセンスより、問いの狭さから生まれます。「この商品をどう宣伝するか」と聞けば、答えは機能説明や広告表現の範囲に閉じます。「顧客が本当に前へ進めない理由は何か」と聞き直せば、商品自体を変える選択肢も入ります。

ブログルでは、次の8方向から元の問いを書き換えます。8個の答えを採用するのではなく、見落としていた土俵を見つけるための作業です。

視点 問いの変え方
全体 一部分ではなく、体験全体で解くなら?
主観 自分たちの偏愛や違和感を起点にするなら?
理想 現状の延長ではなく、望む未来から逆算するなら?
動詞 商品名ではなく、顧客の行動で捉え直すなら?
破壊 業界のどんな常識を捨てるなら?
目的 今の手段は、何のために存在するのか?
利他 顧客や社会に、どんな良い変化を残すなら?
自由 既存の枠を外したら、本当は何を問うべきか?

たとえば「コップをどう改良するか」を「水を運ぶ方法をどう変えるか」と動詞で問い直せば、答えはコップである必要がなくなります。ここで大切なのは奇抜さではありません。競合と同じ問いに、少し良い答えを出すだけの会議から抜けることです。

候補が出たら、自由度と事業への影響で比べます。答えが一つに決まりきっている問いは狭すぎます。何でも答えになってしまう問いは広すぎます。チームが考えられ、判断が変わる幅に置きます。

ステップ2|顧客の葛藤と、目指す未来から意味を組み立てる

問いが定まったら、コンセプトの意味をつくります。起点は二つです。顧客の葛藤が鮮明なら4C、経営者や作り手の未来像が鮮明ならMVCから始めます。片方だけで決めず、最後にもう一方から矛盾がないか確かめます。

4C|顧客の葛藤からつくる

インサイトは、アンケートに書かれた要望そのものではありません。「Aしたい。でもBはしたくない」という本音の衝突です。この葛藤を、次の順で短い物語にします。

  1. Customer:誰が、どんな葛藤を抱えているか
  2. Competitor:既存の選択肢では、なぜ解けないか
  3. Company:自社は、どんな事実や能力で応えられるか
  4. Concept:その結果、どんな新しい意味を提供するか

スターバックスは公式の会社案内で、家庭でも職場でもない「サードプレイス」を提供すると説明しています。これは店舗の装飾だけを決める言葉ではありません。過ごし方、接客、商品、立地を同じ方向へそろえる観点として働きます。強いコンセプトは、言葉の説明より、複数の判断が一貫することで見えてきます。

4Cで注意したいのは、競合の弱点を勝手に決めないことです。顧客インタビュー、問い合わせ、失注理由、競合の公開情報など、観察できる事実と解釈を分けます。「顧客はきっとこう思う」で穴を埋めると、きれいな物語だけが残ります。

MVC|未来の意志からつくる

顧客がまだ言葉にしていない価値をつくる場合は、MVCで考えます。

  • Mission:そもそも何のために存在するのか
  • Vision:どんな具体的な未来を実現したいのか
  • Concept:その未来へ向けて、今どんな価値をつくるのか

ビジョンは「誰もが笑顔に」のような抽象語では足りません。言葉を読んだ人が、実現後の場面を描けるところまで具体化します。同時に、すぐ達成できる目標でも、現実から切れた夢でもなく、努力すれば届く範囲に置きます。

4Cが顧客だけに寄りすぎると、自社らしさが消えます。MVCが作り手だけに寄りすぎると、顧客不在になります。両方を通して、誰のどんな変化を、なぜ自社が約束できるのかを一文で説明できる状態にします。

ステップ3|ターゲット・行動・役割から一行へ削る

意味ができたら、最後に一行へ削ります。先に次の文章を埋めると、言葉遊びを避けられます。

【ターゲット】が【新しい行動】をするために、【自社の役割】を担う。

この文章は提出物ではなく材料です。ここから中心となる概念を二つほどに絞り、複数の言い方をつくります。「AをBへ変える」「AではなくB」「AのいらないB」「AのようなB」など、構造を変えて比べると、最初の表現に引っ張られません。

Appleは2001年のiPod発表で、5GBで最大1,000曲を持ち運べ、ポケットに収まるという価値を示しました。容量を隠したのではなく、顧客が何をできるようになるかへ翻訳した例です。コンセプトとコピーは別物ですが、強い価値設計は、受け手の言葉へ短く翻訳できます。

候補は一案に絞り込まず、問いと根拠の異なる三案程度を並べます。一案だけでは、決裁が好き嫌いの投票になりがちです。「どの顧客事実から来たか」「何を捨てる案か」「実現根拠は何か」を添えると、比較が判断になります。

ブログル自身の編集方針を一行へ削った例

ブログルも「マーケティング情報を発信するメディア」という広い説明で止めず、誰の何を変えるのかへ戻しました。現在の編集方針は「企業の『伝わらない』を調べ、判断材料に変える実務メディア」です。「情報を発信する」という手段ではなく、企業が判断できる状態をつくる役割まで一行に入れています。記事、一次調査、FAQ、Xの問いがこの役割につながらない場合は、企画を足す前に目的を見直します。

良いコンセプトを判定する4条件+体温

候補は、感想ではなく条件で比べます。細田高広氏の『コンセプトの教科書』が示す4条件に、同書が追加の検討事項として挙げる「体温」を合わせて確認します。

条件 確認する問い
顧客目線 顧客の葛藤や望む変化から始まっているか
ならでは 競合の社名へ置き換えても成立する言葉になっていないか
スケール 十分な顧客と事業の広がりを見込めるか
シンプル 現場が覚え、選択に使えるか
体温 作り手が自分の言葉として信じ、語れるか

体温は、熱い言い回しのことではありません。正論で相手を押し切らず、それでも自分たちが実現したいと腹から思えるか。論理的に整っていても、当事者が借り物だと感じる言葉は運用されません。

仕上げに二つのテストを行います。まず一行を空で3回唱え、覚えられるか、途中で言いよどまないかを確かめます。次に候補を残して1週間置き、何も見ずに思い出せる案を確認します。これは成果を保証する試験ではなく、言葉が流通するかを見る簡単な点検です。

作って終わらせず、実際の判断で試す

コンセプトの完成は、言葉が決まった日ではありません。商品、価格、営業資料、採用、Webサイトなど、異なる場面で判断が変わるかを試します。

ここは作り方の次のステップではなく、作った仮説を実装し、ONブランドかOFFブランドかを確かめる運用工程です。本記事では、作成を3ステップ、検証をその後の継続工程として分けます。

最初の運用は次の順で十分です。

  1. 次に予定している企画を三つ選ぶ
  2. 各企画がコンセプトに合う理由と、合わない理由を書く
  3. 判断が割れた言葉を記録する
  4. 顧客へ簡単な案や説明を見せ、何に価値を感じたかを聞く
  5. 言葉ではなく、約束・対象・根拠のずれを直す

「分かりやすいですか」と聞くと、好意的な返事だけが集まりやすくなります。「どんな人に必要だと思うか」「何と比べたか」「どこが信じにくいか」と尋ねたほうが、設計の弱点が見えます。

事業コンセプトを「誰に・何を・どのように」で整理する基本は、中小企業基盤整備機構のJ-Net21も公開しています。この記事の3ステップは、その三要素を埋める前に問いを広げ、意味と実現根拠を確かめるための手順です。

90分の会議では、候補を増やしてから削る

最初の15分で誰が、いつ、何を決めるかを絞ります。次の20分で八つの視点から問いを書き換え、25分で顧客の葛藤か目指す未来から意味を組み立てます。15分で一行候補を複数つくり、最後の15分で四条件+体温から落とします。

採用案だけでなく、落とした理由も残します。対象が広すぎる、競合も同じ根拠で言える、顧客には魅力的でも再現できない、覚えやすいが業務判断が変わらない。理由を残せば、似た案が何度も復活するのを防げます。

一行と一緒に、五つの前提を残す

対象、葛藤、約束、根拠、変える判断を一枚にします。一行だけを配ると、人によって解釈が広がり、結局すべてがONブランドに見えます。五つがつながらないなら、響きがよくても設計は未完成です。

まとめ|一行を書く前に、問いを一つ書き換える

コンセプトは、かっこいい言葉を決める会議ではありません。顧客にどんな価値を約束し、何を選び、何を捨てるかを決める作業です。

まず、いま抱えている問いに「目的の視点」を当ててください。「これを手段だとしたら、本当は何を変えたいのか」。答えが現在の企画とずれているなら、言葉を磨く前に見直す場所が見つかっています。

商品は良いのに選ばれない原因を整理したい場合は、良い商品なのに売れない理由へ。作ったコンセプトを会社全体の体験へつなぐ場合は、企業ブランディングの記事へ進んでください。社内に設計や実装の手が足りない場合は、発注範囲を決める前にマーケティング外注の判断基準を確認できます。

参考資料


お悩みやご相談はありませんか?

マーケティング・経営に関するご相談は、お気軽にお問い合わせください。

お問い合わせはこちら

ご相談は無料です。しつこい営業は行いません。

share

  • Facebookでシェア
  • Xでシェア
  • LINEでシェア