【Case24:牛乳石鹸共進社の場合】マケシリ〜マーケティング事例に隠された心理効果を知ろう〜

マケシリでは、最近ちょっと気になったマーケティング事例を独断と偏見でピックアップ!
弊社顧問で心理学博士の関屋 裕希さんになぜ気になっちゃうのかを心理学の観点から紐解いていただきます。

関屋 裕希 Yuki Sekiya
1985年1月31日生まれ/福岡県福岡市出身
せきや・ゆき/臨床心理士。公認心理師。博士(心理学)。東京大学大学院医学系研究科 デジタルメンタルヘルス講座 特任研究員。専門は職場のメンタルヘルス。業種や企業規模を問わず、メンタルヘルス対策・制度の設計、組織開発・組織活性化ワークショップ、経営層、管理職、従業員、それぞれの層に向けたメンタルヘルスに関する講演を行う。近年は、心理学の知見を活かして理念浸透や組織変革のためのインナー・コミュニケーションデザインや制度設計にも携わる。著書に『感情の問題地図』(技術評論社)など。
ホームページ:https://www.sekiyayuki.com

2025年5月23日から3日間にわたり、牛乳石鹸共進社がリアルイベント「みんなのAWA‑YA meets 下北沢」を開催しました。このイベントは、同社の公式オンラインショップ「みんなのAWA‑YA」のオープンを記念し、下北沢の街全体を舞台に、ブランドの世界観を五感で楽しめるリアルな体験型プロモーションとして実施されました。

この企画では、「みんなのAWA‑YA」で展開される商品のレビューやパッケージの世界観を、実際に下北沢の店舗で体験できるよう工夫しています。泡を直接肌で感じる“泡体験”や、歴代パッケージを探す「FIND OLD AKABAKO」など、オンラインの世界をそのままリアルに持ってきた演出が注目されました。店舗を巡るスタンプラリーでは、地元飲食店や古着屋25店舗と連携しながら参加者が街を散策できる仕掛けも取り入れられました。

このように、単なるイベントではなく“ブランドの世界観を街に拡張する”ことで、ファンとのエンゲージメントを深めただけでなく、サブカル層や若年層へのリーチにも成功したプロモーションとして高く評価されています。

場所と世界観がつながっていることで“違和感ゼロ”の没入感に

──関屋さん、今回のイベント、かなり街に溶け込んでましたよね。

関屋:はい、下北沢というロケーション自体が、ブランドの世界観ととてもマッチしていましたよね。カルチャーやサブカルが根づいたおしゃれな街で、牛乳石鹸のちょっとレトロでかわいらしいパッケージがよく映えていました。

しかも、ただ店舗に商品を並べるだけじゃなく、銭湯・飲食・古着などのローカルコンテンツとも相性よく接点を増やしている。これによって“日常の中に自然にあるブランド”という印象が生まれるんです。そういう意味で、非常にエンゲージメント設計が上手い事例だと感じました。

視覚・触覚・行動…「五感」で体験させる立体的プロモーション

──カルタがガチャガチャの引換券になるっていう仕掛け、面白かったですよね。

関屋:あれ、まさに「体験を積み重ねる設計」なんですよね。カルタという一つの遊びが、後からガチャとつながって「次は何が出るんだろう」とワクワクが続いていく。しかも、それが全部ブランドの世界観の中で完結しているので、遊びながら自然と商品やブランドへの親しみが生まれる。

「かわいい」「楽しい」「また来たい」っていう気持ちが連鎖していくので、単なるイベントじゃなく、記憶に残る“体験”になるんです。CMや広告より、ずっと深く心に残るアプローチですね。

「変わらなさ」も武器になるブランディング

──最近はシンプル&ミニマルなパッケージが多い中で、牛乳石鹸ってほとんど変わってないですよね。

関屋:そうなんです。あの“いつもの牛乳石鹸”のパッケージが、ああやって街中のイベント空間に登場すると、逆に新鮮に見えるんですよね。でも見慣れてるからこそ「やっぱりこのデザイン、かわいいな」と思わせる力がある。

まとめ

牛乳石鹸の今回のプロモーションは、街の空気感・ブランドの世界観・参加者の体験がすべて違和感なく溶け合った設計が見事でした。

“変わらないかわいさ”に、“変わる楽しさ”を掛け合わせた立体的な体験は、参加者にポジティブな印象を残し、自然な認知拡大につながっています。

CMやバナーだけでは届けられない“感情レベル”のブランディング。体験を通じたコミュニケーションこそが、これからの時代の主流になっていくのかもしれません。

──関屋さん、本日もありがとうございました!

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