【Case5:米NPO啓蒙動画の場合】マケシリ〜マーケティング事例に隠された心理効果を知ろう〜
マケシリでは、最近ちょっと気になったマーケティング事例を独断と偏見でピックアップ!
弊社顧問で心理学博士の関屋 裕希さんになぜ気になっちゃうのかを心理学の観点から紐解いていただきます。
第5回目は、米NPOの啓蒙動画を深掘り!
みなさん、海やプールにいくご予定はありますか?
夏ならではの行楽で楽しい一方、危険が潜んでいることを忘れてしまいがち。
アメリカにおいては、1歳から5歳までの幼い子どもの死因ランキング1位であり、5歳から14歳までの子どもにおいても2位という驚くべき危険性を誇る現象「溺死」。
そんな溺死の危険性を訴えかけた米NPOの啓蒙動画について、今回はお話をしていきます。
関屋 裕希 Yuki Sekiya
1985年1月31日生まれ/福岡県福岡市出身
せきや・ゆき/臨床心理士。公認心理師。博士(心理学)。東京大学大学院医学系研究科 デジタルメンタルヘルス講座 特任研究員。専門は職場のメンタルヘルス。業種や企業規模を問わず、メンタルヘルス対策・制度の設計、組織開発・組織活性化ワークショップ、経営層、管理職、従業員、それぞれの層に向けたメンタルヘルスに関する講演を行う。近年は、心理学の知見を活かして理念浸透や組織変革のためのインナー・コミュニケーションデザインや制度設計にも携わる。著書に『感情の問題地図』(技術評論社)など。
ホームページ:https://www.sekiyayuki.com
本日は米NPOの啓蒙動画についてお伺いしていこうと思いますが、ご覧になってどのような印象を受けましたか?!
ーみなさんの思い込みを上手に突いた映像ですね。”溺れる”という状況を想像する時、お子さんが水面をバチャバチャ!と暴れている様子を描く人がきっと多いですよね。ただ、実際はみなさんが思っているより静かに訪れるものだということがよく伝わってきますね。
私もまさしく、↓の画像のようのお子さんが水面をバチャバチャしているところを想像しました。
ーですよね。そうしたすでに形成されたイメージや思い込みが”実はそうではない”ということを、言葉でいくら説明されてもなかなか元々のイメージを変えるのって難しいことで。。なので、言葉であれこれと啓蒙しようとするのではなく、動画で印象的に伝えることが効果を発揮しているように思います。
動画なのに、すごく静かなのがさらに恐怖を煽りますね、、
ー静かに訪れるということも上手く描いていますが、溺れている人視点で描かれていることもみなさんに危険性や恐怖が伝わる大きな要因の一つですね。実際に溺れることがない限りは見ることがない景色ですからね、、
確かに、溺れる状況をイメージする時、”自分が”という状況はイメージしませんね。
ーさらに言うと、これは溺れるリスクが高い子供を見守る親に向けてのメッセージが強いように感じました。と言うのも、我々大人は人が水面をバチャバチャしている様子で溺死の危険性を啓蒙されても、もともと植え付けられたイメージに沿っているだけなので、それほど強い恐怖や危険を感じられません。ただ、こうして認識している事実とのギャップを見せられることによって、改めて気をつけようという気持ちになるのだと思います。
逆に、この動画をお子さんに見せたらどうでしょうか?お子さんにはこの動画の文脈を理解することはなかなか難しい気がしますよね。お子さんには水面をバチャバチャとしている様子を見せた方が、きっと恐怖や危険をわかりやすく伝えることができるのではないかと思います。
年齢や性別、どういう環境で育ったかなどによってターゲット層となる人たちが持っているイメージや価値観は異なるので、それを想定したうえで、アプローチを使い分け、既存のイメージや価値観を覆すことで強く印象を残すことができるということですね。
それぞれがいかに自分ごと化できる状況を作り出し、見せるか、と言うことが大事なようですね!
危険はすぐそこに潜んでいるということを、忘れずにみなさま夏のレジャーをお楽しみください^^
関屋さん、本日もありがとうございました!