【LISTEN】顧客の本音を聞けていますか?
「心理学」「脳科学」関連の書籍を読んで、blogle編集部が感じたことをお伝えしていくコーナーです。
今回は、顧客インタビューや商談で「質問はしているのに、相手の判断理由までつかめない」と感じているマーケティング担当者に向けた記事です。
このテーマは【『LISTEN――知性豊かで創造力がある人になれる』著者:ケイト・マーフィ、篠田真貴子監訳、松丸さとみ訳(日経BP)】に書かれている内容からインスピレーションを受けました。

今回お伝えしたい結論を先に言ってしまうと
「顧客の本音は、上手な質問を並べただけでは見つかりません。自分の答えをいったん保留したときに、ようやく聞こえ始めます」
「聞く力とは、相手をうなずかせる技術ではなく、自分の理解を更新できる力です」
聞くことは、黙って順番を待つことではない
会議で相手が話している間、次に何を言うかを考える。スマートフォンの通知を一瞬だけ見る。話の途中で、自分の経験に置き換えて結論を急ぐ。本書の日本語版「はじめに」は、現代の会話が「聞く」より「話題を提供し、場を仕切る」方向へ傾いていると指摘します。
著者のケイト・マーフィはジャーナリストです。政治家、研究者、経営者、アーティストなど、多様な人へ取材してきました。本書が扱うのは、相づちや姿勢だけの話ではありません。誰の話を、どのような状況で、どこまで注意を向けて聞くか。それが自分の理解や判断をどう形づくるか、という問いです。
日本語版は2021年8月9日発行、全504ページ。原著の目次は導入と17章、結論で構成され、好奇心、思い込み、反対意見、沈黙、注意散漫など、「聞けなくなる理由」を場面ごとに掘り下げています。
聞いているように見えることと、実際に理解しようとしていることは違います。順番を待ちながら頭の中で反論を組み立てているなら、口を閉じていても会話には参加できていません。
聞くことは受け身ではありません。相手の話によって、自分の見方が変わる可能性を引き受ける行為です。
思い込みは、耳をふさぐ前に質問を決めてしまう
本書の原著には「I Know What You’re Going to Say: Assumptions as Earplugs」という章があります。直訳すれば、「あなたが何を言うか分かっている――耳栓としての思い込み」。相手の答えを聞く前に「きっとこうだ」と決めれば、質問は確認作業に変わります。
顧客インタビューでも同じです。「価格が高かったから見送ったのですよね」と聞けば、相手は否定するか同意するかを選ぶだけになります。「検討を始めてから見送るまで、何がありましたか」と聞けば、比較した相手、社内で止まった場所、決め手にならなかった情報まで話せる余地が生まれます。
質問の違いは、言い回しだけではありません。前者は仮説を守るための質問。後者は仮説を壊す可能性も残した質問です。
よい聞き手は、正解を当てる人ではなく、予想外の答えが入ってくる余白を残せる人です。
相づちより、相手の意味を確かめる
「なるほど」「分かります」と応じれば、会話は滑らかに進みます。ただ、それだけで理解したことにはなりません。日経BOOKプラスが本書から抜粋した「空気が読めない人には何が足りないのか?」では、うなずきやオウム返しだけでなく、聞き手が意味づけと解釈を返すことの重要性が紹介されています。
たとえば顧客が「使いにくかった」と話したとします。そこで「使いにくかったのですね」と返しても、分かるのは評価だけです。「最初に迷ったのは、どの画面でしたか」「そのとき、何を探していましたか」と続けると、使いにくさが操作の問題なのか、説明の問題なのか、期待とのずれなのかが見えてきます。
反対意見やつじつまの合わない話を避けないことも大切です。本書は、聞きたいことだけを聞く姿勢が理解を狭めると繰り返し示します。違和感を責めるのではなく、「ここまでの話と少し違って聞こえました。何が変わったのでしょう」と確かめる。会話の精度は、その一問で変わります。
顧客インタビューは、仮説を証明する場ではない
マーケティングの現場では、調査の前に仮説を立てます。仮説がなければ、何を聞くか決められません。しかし仮説が強すぎると、都合のよい発言だけを拾うようになります。
この矛盾を避けるには、インタビューの目的を「仮説の証明」から「理解の更新」へ置き換えます。聞く前に、次の二つを記録します。
- いま、自分たちは何が起きていると思っているか
- どんな話が出たら、その見方を変えるか
二つ目が書けない仮説は、調査で確かめる仮説ではありません。すでに信じると決めた結論です。
インタビュー後は、発言を「確認できたこと」「見方が変わったこと」「まだ分からないこと」の三つに分けます。感想文にせず、次に確かめる問いまで残す。この整理が、聞いた話を商品、コンテンツ、営業資料へつなぐ橋になります。
本音を聞くための4つの欄
顧客の言葉を、そのまま「ニーズ」に変換すると誤解が起きます。インタビュー中のメモは、次の4欄に分けると整理できます。
1. 事実:いつ、どこで、何をしたか。
2. 本人の言葉:評価や感情を、言い換えずに記録。
3. こちらの解釈:なぜそうしたのかという仮説。
4. 次の質問:解釈を確かめるために、何を聞くか。
特に分けたいのは、本人の言葉とこちらの解釈です。「相談しづらかった」は発言ですが、「担当者との信頼が不足していた」は解釈です。混ぜて記録すると、解釈がいつの間にか顧客の事実へ変わってしまいます。
聞き取った言葉をコンセプトへまとめるときも、この区別が役立ちます。言葉を一行へ絞る手順は、関連記事「コンセプトの作り方|会議で判断に使える一行へ絞る3ステップ」で詳しく整理しています。
次の商談では、答える前に一問だけ足す
聞く力を高めようとすると、質問集や相づちの型を増やしたくなります。けれど、本書が繰り返し示すのは技術より好奇心です。目の前の人が、自分の予想とは違う景色を見ているかもしれない。その前提があるかどうか。
次の商談やインタビューで、すべてを変える必要はありません。相手の答えを聞いて、こちらが説明を始める前に一問だけ足します。
「そう考えるようになったのは、どんな出来事があったからですか」
意見の奥にある経験まで聞ければ、顧客像は属性から判断の物語へ変わります。話す準備を少しだけ手放したところに、企画を変える材料が残っているのかもしれません。
顧客理解やブランドメッセージを整理したい方は、お問い合わせフォームからご相談ください。
参考・出典
お悩みやご相談はありませんか?
マーケティング・経営に関するご相談は、お気軽にお問い合わせください。
ご相談は無料です。しつこい営業は行いません。