【Case42:ディップ株式会社の場合】マケシリ〜マーケティング事例に隠された心理効果を知ろう〜
マケシリでは、最近ちょっと気になったマーケティング事例を独断と偏見でピックアップ!
弊社顧問で心理学博士の関屋 裕希さんになぜ気になっちゃうのかを心理学の観点から紐解いていただきます。
PROFILE
関屋 裕希Yuki Sekiya
せきや・ゆき/臨床心理士。公認心理師。博士(心理学)。東京大学大学院医学系研究科 デジタルメンタルヘルス講座 特任研究員。専門は職場のメンタルヘルス。業種や企業規模を問わず、メンタルヘルス対策・制度の設計、組織開発・組織活性化ワークショップ、経営層、管理職、従業員、それぞれの層に向けたメンタルヘルスに関する講演を行う。近年は、心理学の知見を活かして理念浸透や組織変革のためのインナー・コミュニケーションデザインや制度設計にも携わる。著書に『感情の問題地図』(技術評論社)など。
ホームページ:https://www.sekiyayuki.com
2026年8月10日の「バイトルの日」に合わせてディップ株式会社が実施した「バ先であった〇〇な話大募集キャンペーン」についてご紹介します。

この企画ではアルバイト先で実際に起きた心が動くエピソードをユーザーから募集。「胸キュン」「友情」「神客・感動」「限界オタク妄想」の4部門が用意されており 優秀作品はバイトル公式SNSで配信されているショートドラマ「バ先の先輩がメロすぎる」の制作チームによって映像化されます。
特徴的なのはユーザーをコンテンツを見るだけの存在にせず 自分のアルバイト体験をストーリーとして提供する側に巻き込んでいる点です。さらに応募者の中から810名に参加賞を用意するなど「8月10日=バイトルの日」という記念日そのものを覚えてもらう仕掛けも取り入れられています。
投稿を集めて終わるのではなく 実体験をショートドラマとして再びコンテンツ化し そこから次の視聴や参加へつなげていく今回の施策は Z世代との接点をユーザー参加型で広げていくマーケティング事例として注目されています。
すでにバイトをしている人との接点をつくる
──関屋さん 今回は普通の求人キャンペーンとはかなり違いますよね。
関屋:そうですね。求人サイトなので普通なら「新しくバイトを探している人」を狙うと思いますよね。でも今回は すでにアルバイトをしている人や 過去にアルバイト経験がある人も参加できる。
つまり 求人を探している瞬間だけではなく 普段からブランドとの接点を作ろうとしているんですよね。
今すぐ転職やバイト探しをする予定がなくても「バイトルってこういう面白いことやってるんだ」と思ってもらえれば 次に仕事を探すときに思い出してもらえる可能性があります。
求人情報では伝わらない「バイトの楽しさ」
──エピソードを募集するというのも特徴的ですよね。
関屋:そこが面白いと思います。
アルバイトって お金を稼ぐためだけにするものではないですよね。友達ができたり 好きな人ができたり 接客を通じて自信がついたりすることもある。
普通の求人情報では 時給や勤務地 勤務時間などが中心になるので そういう経験まではなかなか伝えられません。
でも実際のエピソードを見せれば「自分もバイトを始めたらこんな経験があるかもしれない」と想像できる。アルバイトそのものへの印象を変えるきっかけになりますよね。
SNSだから参加型の企画が作りやすい
──こうしたキャンペーンは SNSとの相性もよさそうです。
関屋:かなりいいと思います。
今は自分の経験をSNSに投稿することが当たり前になっています。だから企業側も 一方的に広告を出すだけではなく ユーザーからエピソードを集めてコンテンツにできる。
昔よりこういう参加型の企画はやりやすくなっていますよね。
もちろん その分SNS上のコンテンツも増えているので競争は激しいです。求人の作成自体もAIによって効率化されていく中で 企業としては「求人情報以外に何を発信するか」がますます重要になると思います。
「メロい」で若い世代との距離を縮める
──ショートドラマでは「メロい」という言葉も使われていますね。
関屋:若い人が普段使っている言葉を取り入れているのは大きいですよね。
企業が若者向けに無理して若者言葉を使うと 違和感が出ることもあります。でもショートドラマというフォーマットの中で使えば自然に見せやすい。
特に恋愛をテーマにすることで 男性を含め これまで求人広告を積極的に見ていなかった人にも興味を持ってもらえる可能性があります。
「求人を見てください」ではなく「このドラマ面白そう」から入ってもらえる。入口を変えているんですよね。
これからバイトを始める世代にも届く
──今後アルバイトを始める若い世代へのアプローチにもなりそうですね。
関屋:そうだと思います。
これから初めてアルバイトをする人にとって バイト先がどんな場所なのかって分からないですよね。
そこで「働くのは大変だけど お金以外にもこんな経験がある」と見せてあげると アルバイトに対するハードルも少し下がる。
アルファ世代のような これからアルバイト市場に入ってくる若い人たちとの接点を早い段階から作る意味でも面白い企画だと思います。
まとめ
ディップ株式会社の今回の企画は 求人情報を直接訴求するのではなく「アルバイトをするとどんな経験ができるのか」を伝えるマーケティング事例でした。
時給や勤務条件だけでは伝わらない 恋愛や友情 人とのつながり。
そうしたアルバイトならではの体験をショートドラマやSNSを通じて見せることで「自分もこんな経験ができるかもしれない」と感じてもらう。
求人を探している瞬間だけではなく 普段から若い世代との接点を作ることが 今後さらに重要になっていきそうです。
──関屋さん 本日もありがとうございました!
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