【スイッチ!】変わろうとしても、なぜ戻るのか?
「心理学」「脳科学」関連の書籍を読んで、blogle編集部が感じたことをお伝えしていくコーナーです。
今回は「変わろうと思ったのに、気づけば元に戻ってしまうのはなぜか?」というテーマでお話したいと思います。
このテーマは【『スイッチ!「変われない」を変える方法』著者:チップ・ハース/ダン・ハース】に書かれている内容からインスピレーションを受けました。

今回お伝えしたい結論を先に言ってしまうと
「変われないのは、意志が弱いからではない」
「理性と感情、そして周りの環境。三つの向きがそろった時に、人は静かに変わっていく」
ということです。
変わろうと決心しても、しばらくすると元の場所に戻ってしまう。私たちはそれを「意志が続かなかった」「自分は根性がない」と自分のせいにしがちです。
しかし本書を読んでいると、変われない多くの理由は根性ではなく、理性と感情、そして環境のどれかひとつが噛み合っていないだけなのかもしれないと感じます。
私たちの中には、「象使い」と「象」がいる
本書では、人の心を大きな象と、その背中に乗る象使いにたとえて語られています。
象使いは、私たちの理性の部分です。地図を持ち、こちらへ進むべきだと考える存在だと語られています。
一方の象は、感情の部分だとされています。力が強く、行きたい方向へどんどん歩いていってしまいます。
いくら象使いが右へ行こうと号令をかけても、象が左に行きたいと感じていれば、体の大きさに引きずられて左へ流れていってしまうのだそうです。
私たちが「頭ではわかっているのに、続かない」と感じる時、それは象使いだけが動いていて、象が置き去りになっている状態なのかもしれません。
変化を続けるには、理屈で納得するだけでなく、感情の側にも「行きたい」と思ってもらう必要があるのだと思います。
変われないのは、意志ではなく道筋の問題かもしれない
本書のもうひとつの大切な視点が、道筋という考え方です。
象使いと象がいくらがんばっても、二人が歩く道そのものが荒れていたり、迷いやすかったりすると、思うようには進めません。
本書では、こんなエピソードが紹介されています。映画館でポップコーンを配ると、たとえ味が落ちていても、大きな容器で渡された人ほど多く食べてしまう、というものです。
食べすぎたのは、意志が弱かったからではありません。容器という道筋が、食べすぎる方向へそっと後押ししていたのだそうです。
私たちも同じで、続けたいことがうまくいかない時、自分の意志を責める前に、周りの環境を見直したほうがよいのかもしれません。
変わりたいなら、まず、自分が歩く道筋の方を少しだけやさしく整えてあげる。それが、意志を頼りにするより長く続く方法なのだと思います。
大きな変化を、小さな「一歩」に分ける
本書の中で、私が特に心に残ったのが「変化を小さくする」という考え方でした。
大きな目標は、頭の中では魅力的に見えます。しかし、象の側から見ると、あまりに大きい変化は「怖いもの」に映ってしまうのだそうです。
本書では、部屋を片づけられない人に対して、ある研究者が「5分だけ片づけてみてください」と伝えた話が紹介されています。
たった5分と決めると、心の中の抵抗はぐっと小さくなります。そして始めてしまえば、多くの人は、気づけば5分を過ぎても手を動かし続けていたそうです。
始める前の重さと、始めた後の軽さ。この差はとても大きいのだと思います。
変化は、大きく気合を入れて起こすものではなく、始められる大きさまで小さく刻んであげるもの。そう考えると、動き出せる場面はぐっと増えるように思います。
うまくいっている一部を、そっと広げる
本書の中で、もうひとつ印象に残った考え方が「ブライト・スポット」と呼ばれるものです。
これは、うまくいっていない状況の中にも、必ず一部うまくいっている瞬間や人がいる、という考え方だと語られています。
変化を起こそうとする時、私たちはつい、うまくいっていない部分ばかりを見てしまいます。
けれど本書は、まず「なぜかうまくいっている一部」に目を向け、その理由を丁寧に探すことを勧めています。そこには、この状況の中でも変化が起きうる、という手がかりが隠れているのだそうです。
これは、自分自身にも通じる話なのかもしれません。うまくいかない日々の中でも、少しだけ気分が軽かった日、思ったより手が動いた瞬間は、きっとあります。
「なぜ、あの時はうまくできたのだろう」と自分に問い直すこと。その小さな探し物が、次の一歩の道しるべになるのだと思います。
『スイッチ!「変われない」を変える方法』は、私たちが変われない理由を「弱さ」ではなく「仕組み」として見せてくれる一冊です。
変われないのは、意志が足りないからではないのかもしれません。
理性を導き、感情を動かし、道筋をやさしく整える。三つのスイッチが少しずつ入った時、人は静かに、確かに変わっていくのだと思います。
今日、変えたい何かがあるなら。まず、始められる大きさまで、それを小さく刻んでみる。その小さな一歩が、明日の景色を、少しだけ変えていくのかもしれません。
ここまでは本の話ですが、この「変化を仕組みで支える」という視点は、企業のマーケティングやコミュニケーションにも通じるように思います。少しだけ、仕事の話にひきつけて考えてみます。
「変えてください」ではなく、「うまくいっている一部」を照らすところから始める
本書のブライト・スポットという考え方は、そのままマーケティングの現場にも効いてくるように思います。売上が伸び悩んでいる時、私たちはつい「何がダメだったか」を先に洗い出しがちです。CVRが落ちた、離脱が増えた、リピートが弱い——問題ばかりに焦点が集まると、施策は「全体を一気にテコ入れする」大きなものになりやすい。けれど、大きな変化はたいてい、走り出すまでのハードルが高すぎて動きが鈍ってしまいます。
そこで先に見つけたいのが、うまくいっている一部です。よく売れている商品、なぜか離脱率が低い経路、驚くほど継続してくれているお客さまの層。その「なぜかうまくいっている」場所にこそ、いまの自社にとって現実的に効く変化のヒントが眠っているのかもしれません。たとえば、あるチャネル経由のお客さまだけリピート率が高いなら、その体験のどこが良かったのかをヒアリングし、他チャネルにも移植する。全部を変えるより、うまくいっているところの理由を分解して広げる方が、変化の成功確率はぐっと上がるのだと思います。
マーケティングの改善は、ダメな理由を数え上げることから始めるより、うまくいっている理由を照らすことから始めた方が、動き出しやすいのかもしれません。
お客さまへのお願いは、「まず、これだけ」に刻む
本書の「変化を小さくする」という視点は、お客さまに動いていただく設計にもそのまま応用できるように感じます。私たちはつい、伝えたいことをまとめて一度に届けたくなります。「無料相談をご予約ください」「資料をダウンロードして、比較して、営業とお話しして、そこでご検討ください」——本当は誠実さのつもりが、受け取る側からすると「やることが多いな」と感じられ、行動が止まってしまいます。
だからこそ、最初のお願いは「まず、これだけ」に刻んでしまうのが良いのかもしれません。たとえば高関与商材のLPで、いきなり相談予約を求めるのではなく、まずは「30秒でわかる資料を、メールアドレスなしで見る」という一段だけを差し出す。始めやすい一歩を用意しておくと、象の側の「大変そう」という抵抗が下がり、次の一歩へ自然につながっていきます。一貫性の原理として知られる通り、人は一度自分がとった小さな行動と、そのあとの振る舞いをそろえたくなるものです。だから、最初の一歩をどこに置くかは、その先の関係の入り口そのものだと言ってもよいのだと思います。
こうした設計は、お客さまを誘導するテクニックというより、「動きやすい道筋を用意しておく」姿勢に近いのかもしれません。始められる大きさに刻んで差し出すことは、押し売りの反対側にある、相手への配慮のかたちなのだと思います。
売るための入り口である前に、相手が動き出しやすい入り口であること。それが、長くお付き合いいただける関係の、はじめの一歩なのかもしれません。
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