【Case17:花王の場合】マケシリ〜マーケティング事例に隠された心理効果を知ろう〜

マケシリでは、最近ちょっと気になったマーケティング事例を独断と偏見でピックアップ!
弊社顧問で心理学博士の関屋 裕希さんになぜ気になっちゃうのかを心理学の観点から紐解いていただきます。

関屋 裕希 Yuki Sekiya
1985年1月31日生まれ/福岡県福岡市出身
せきや・ゆき/臨床心理士。公認心理師。博士(心理学)。東京大学大学院医学系研究科 デジタルメンタルヘルス講座 特任研究員。専門は職場のメンタルヘルス。業種や企業規模を問わず、メンタルヘルス対策・制度の設計、組織開発・組織活性化ワークショップ、経営層、管理職、従業員、それぞれの層に向けたメンタルヘルスに関する講演を行う。近年は、心理学の知見を活かして理念浸透や組織変革のためのインナー・コミュニケーションデザインや制度設計にも携わる。著書に『感情の問題地図』(技術評論社)など。
ホームページ:https://www.sekiyayuki.com

花王は、11月26日の「いい風呂の日」に合わせて、大阪の阪急梅田ビッグマン前広場で『帰宅後 即フロ』バブサンプリングイベントを1日限定で開催しました。

花王が20~50代の男女1,000人を対象に実施した「帰宅後の入浴に関する調査」によると、毎日帰宅後すぐに入浴している人は全体の3割以下でした。​一方、帰宅後すぐに入浴をしている人の約8割は、夜時間が長く得した気分になるなど、“充実した夜時間”を実感していることが分かりました。

イベントでは、巨大なカプセルマシンを設置し、『バブ メディキュア』や『バブ モンスターバブル』などの入浴剤をランダムで提供。​また、定番シリーズ『バブ ベーシック』のサンプリングも行われました。

「お風呂に入る価値」の啓発を目指した花王のこの取り組みは、「風呂キャン」という言葉が浸透する中、早めの入浴で“充実した夜時間”を提案するものでした。

今回このバブで体験型広告があり、壁に入浴剤の現物が貼られており剥がすと広告の全景が見られる広告がありました。

ティッシュを駅前で配っていると受け取りにくいけれど、体験型だからこそ受け取りやすいという心理的な違いがあるのは面白いですよね。
関屋さん、この広告を見てどう思いましたか?

ー 一つは隠れているものを見たいと思う「ツァイガルニク効果」が関係していると思います。電車の中で、一部だけ分からないものの答えが気になってしまうような感覚ですね。

ツァイガルニク効果
ツァイガルニク効果とは、人は達成できなかったり、中断されたタスクを達成したものよりもよく記憶する心理現象のこと。未完了の課題が気になり続けるため、マーケティングや学習法にも応用される。

ー もう一つ、この広告の場合は、普段街中に貼ってあるものを剥がしてはいけないとか、落書きしちゃいけないとか、禁止されている行為をやりたくなる「カリギュラ効果」も絡んでいると思います。

カリギュラ効果
カリギュラ効果とは、「禁止されるほど、逆にやりたくなる」心理現象のこと。制限されることで好奇心が刺激され、対象への関心が高まるため、マーケティングや広告戦略にも活用される。

確かに、普段禁止されていることはやりたくなってしまいますよね。

ー ポスターや広告などでも「触らないでください」「剥がさないでください」と書いてあるけれど、これはやってもいいという特別な体験になります。さらに、実際に使えるものを提供することで、商品を体験できる点も良いですね。

入浴剤は誰でも使うことができるし、いくらあっても嬉しいものですもんね。

ー また、配られていると受け取りにくいけれど、自分から受け取りに行く能動的な体験にすることで、その後の購買意欲が大きく変わると思います。

興味を持って取りに行ったものと、興味がないものを受け取るのとでは、記憶の残り方が全然違いますよね。

全体的にしっかり作り込まれていて、マーケティングの工夫が随所に見られる素晴らしい事例でした。

今回の花王の施策のように、「体験型」の広告手法は、消費者の心理に深く訴えかける効果があると改めて感じます。

ただ商品を配布するのではなく、能動的に参加できる形にすることで、消費者の印象に残りやすく、購買意欲の向上につながるのがポイントですね。

今後のマーケティングに活かしていきたいと思います!

関屋さん、本日もありがとうございました!

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