ナレッジ・ノウハウ 著者:blogle編集部

【マケシリ44】実体験と創作を分けるエピソード募集

【マケシリ44】実体験と創作を分けるエピソード募集

体験談を募る企画の部門に、「妄想」がある。バイトルのエピソード募集企画を読んで、立ち止まったのはそこでした。

面白い物語を集めたいのか。利用者の実際の経験を伝えたいのか。どちらにも価値はありますが、同じ募集文では済みません。生活者参加型の企画を考える担当者に向けて、今回は「どんな話として受け取るか」を先に決める設計を読みます。

題材は、ディップが2026年8月4日に発表したキャンペーンです。応募期間は8月10日から31日までで、すでに終了しています。参加の案内ではなく、次の企画に使える募集文の考え方として取り上げます。ディップの公式発表

実体験だけではない、四つの募集部門

公式発表では、アルバイト先での恋愛、友情、お客様との心温まる交流に加え、想像上の場面も別部門で募っています。選ばれた作品は、配信中のショートドラマの制作チームが映像化する計画です。ここで確認できるのは募集の仕組みと発表時点の計画であり、映像化の実施や施策の成果ではありません。募集部門と映像化計画の記載

この部門分けを、単に「応募しやすい工夫」と読むだけでは、少しもったいない。実際にあった出来事を思い出す入口と、「こんなことがあったら」と考える入口が、同じ企画の中に用意されています。

思い出と想像は、どちらも作品の材料になります。しかし、企業がそこから受け取れる情報は違う。実体験なら、その人が何を経験したかを確かめる手がかりになる。創作なら、どんな場面を描きたいのかという表現として読めます。後者から、現実の職場でその出来事が起きたとは言えません。

これはディップが両者を混同しているという指摘ではありません。公式が部門を分けていることを、自社の企画に置き換えて考えています。

物語を募るのか、実際の利用を伝えるのか

自社で取り入れるなら、まず集めた話を何に使うかを決めます。ブランドをきっかけに自由な作品を生みたい企画と、利用者が実際にどう使っているかを紹介する企画では、必要な話の種類が変わるからです。

たとえば、商品のある生活を自由に描いてもらう企画なら、創作を受け取る余地があります。反対に、「利用者はこんな場面で役立てています」と伝える記事を作るなら、想像の場面を実例として載せるわけにはいきません。

難しいのは、社内で両方を期待されるときです。「面白い動画にしたい。でも、お客様の本当の声も知りたい」。どちらかを捨てる必要はありません。ただ、応募の入口と集計を分けておかないと、同じ一本を作品として褒めながら、利用実態の証拠にもしてしまいます。

応募者が実体験部門を選んだだけで、その話が確認済みの事実になるわけでもありません。製品の効果や利用状況として公表するなら、何をどこまで確かめられたかが別に必要です。部門分けは事実確認の代わりではなく、確認すべき話を見失わないための入口です。

募集文を二つに分けると、編集の判断も変わる

次は、架空の書店が「本屋で過ごす時間」をテーマに企画する場合の文例です。実際のキャンペーンでも、応募者の声でもありません。賞品、権利、掲載許諾などを含む募集要項全体ではなく、受け取る話の区分を示す部分だけを作っています。

本屋で過ごす時間を、二つの部門で募集します

実体験部門「本屋で出会った一冊」
あなたが実際に本屋で本を選んだ日の話をお寄せください。どんなきっかけで手に取り、その後どう読んだのか。覚えている範囲で構いません。会話や出来事を付け足さず、曖昧な部分はそのままお書きください。

創作部門「もしも、こんな本屋があったら」
想像の本屋を舞台にした短い物語をお寄せください。現実に起きた出来事である必要はありません。掲載時は創作作品であることを示します。

応募フォームでは、どちらの部門かを選んでください。実体験部門の内容を作品化する際に、会話や出来事の創作が必要になった場合は、掲載前に応募者へ相談します。そのままの体験談としては掲載せず、何をもとに編集した作品かを説明する方針です。

二つの文を比べると、応募者にお願いする仕事が違います。実体験部門では思い出の範囲を守ってもらう。創作部門では、現実にあったかどうかを気にせず物語を作ってもらう。企業側も、どちらとして受け取った話なのかを、原稿や動画の制作担当へ引き継げます。

編集で区分が揺れる場面もあります。たとえば実体験をもとに、動画の尺に合わせて架空の会話を加えたい場合。その時点で元の話を上書きせず、応募原文と脚本を別に残します。「実体験をもとに一部を創作した作品」として扱うか、創作を加えず別の見せ方にするか。面白くできるかだけでなく、見る人に何と伝えるかも一緒に判断します。

この文例だけで掲載の同意や権利処理が済むわけではありません。必要な確認は企画ごとに別途行います。また、顧客一社を取材して導入事例を作る場合は、不特定の人への募集とは手順が異なります。担当者や公開範囲の調整は、導入事例インタビューの準備で扱っています。

企画の目的に合う話が残ったか

振り返るときも、二つの部門を合計した応募数だけでは目的を確かめられません。実体験を紹介する企画なら、確認を経て紹介できる話が残ったか。創作企画なら、設定したテーマに沿う作品を形にできたか。まずはその違いを残します。

作品を公開できたことと、ブランドへの関心や購入につながったことも別です。後者を知りたいなら、公開した作品から商品・サービスの説明へ進んだかなど、目的に応じた行動を追う必要があります。今回の公式発表だけで、そこまでの成果は判断しません。

自社の企画書に「エピソードを募集する」と書いてあるなら、次に足したいのは募集件数の目標より、「実際の経験を受け取るのか、自由な物語を受け取るのか」という一文です。両方なら、入口から分ける。面白さを狭めるためではなく、集まった話の価値を取り違えずに使うためです。

参加型コンテンツの目的や、集めた話の見せ方を整理したい場合は、キャンペーン・コンテンツ企画についてご相談いただけます

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