『はじめてのカスタマージャーニーマップワークショップ』|確かめる付箋、どう選ぶ?
「心理学」「脳科学」関連の書籍を読んで、blogle編集部が感じたことをお伝えしていくコーナーです。
マップに「要確認」の付箋が何枚も残っている。全部を調べる時間がないときは、答えが違えば施策を変えることになる一枚から確かめます。今回は、その一枚の選び方と、顧客へ聞く言葉を考えます。
顧客の行動を時系列に描くカスタマージャーニーマップ。チームで話し合って空欄が埋まると、顧客をよく理解できた気がします。ただ、みんなが納得した説明と、実際にお客さんがしたことは、同じとは限りません。
今回は顧客の行動を考える実務書、加藤希尊さんの『はじめてのカスタマージャーニーマップワークショップ』を取り上げます。作成手順の全体要約ではなく、社内で描いたマップを顧客に確かめる段階に絞って読んでみました。
【『はじめてのカスタマージャーニーマップワークショップ(MarkeZine BOOKS)「顧客視点」で考えるビジネスの課題と可能性』著:加藤希尊/翔泳社/2018年刊/ISBN 9784798153759】

今回お伝えしたい結論を先に言ってしまうと
「マップを埋めた後には、次の施策を左右する『まだ確かめていないこと』を一つ選びたい。図が完成したことを、顧客理解の終わりにしないということです」
マップは、チームの見方を並べるところから
本書は、ワークショップの準備からマップ作成、その後の活用までを扱う手引きです。B2CとB2Bそれぞれの作り方があり、参加者が何をどの順に考えるかが示されています。版元の紹介ページでも章立てを確認できます。
最初に決めるのは、どの商品やサービスについて、どこからどこまでの行動を描くか。そのうえで対象となる顧客像を置き、行動、接点、感情などを並べていきます。いきなり「広告を出そう」「サイトを直そう」と自社の打ち手を出すのではなく、顧客側の流れから考える順序です。
この順序には、担当部署の外へ目を向けるきっかけがあります。営業が知る商談中の迷いと、顧客サポートが知る利用後の困りごと。普段は別々の場で話されることを、一枚の上でつなげて考えられます。
ただし、参加者が詳しいからといって、すべての顧客の行動が分かるわけではありません。接客で聞いた話、アクセス記録で見えたこと、担当者の予想。書かれた付箋の見た目は似ていても、その裏にある情報は違います。
経験を持ち寄ることは出発点になりますが、経験から推測した部分まで事実になるわけではありません。
完成した後にも、顧客に聞くことが残る
第6章の題は「マップからアクションにつなげよう」です。作成手順だけで終わらず、活用までを扱う構成に、実務書としての使いどころを感じます。ここから編集部が仕事に持ち帰りたいのは、マップ上の想定を、実際の顧客の声や記録と照らし合わせる使い方です。
ここで気をつけたいのが、清書のときです。検討中の付箋には「たぶん」「要確認」と書いてあったのに、見やすい図へ直す際、その留保が落ちてしまう。すると後から資料を見る人には、調べた結果のように映ります。
これは本書を踏まえた編集部の注意点です。図を共有するときには、顧客から聞いた内容なのか、記録から分かる行動なのか、それとも社内の予想なのかを残しておくと、次の担当者が確かめる場所を見失いません。
すべてを調べ終えるまで施策を考えられない、という話でもありません。限られた時間なら、答えが違ったときに打ち手が変わる箇所から確かめる。本書を仕事に持ち帰るなら、まずここに使いたいと思います。
「この想定が違っていたら、今考えている施策も変わるか」。その問いで、確認する順番を絞れます。
確かめる一枚は、施策の理由から選ぶ
付箋を順番に調べるより、いま予算や手間をかけようとしている施策から逆にたどる。ここが、編集部として本書に加えて考えたい点です。情報が少ない場所と、判断を左右する場所は、必ずしも同じではありません。
その付箋が違っていたら、何を変えるか
施策案の横に「なぜ、これをするのか」を一文で書き、その理由に使った付箋を探します。理由の根拠が顧客から聞いた話なのか、行動の記録なのか、社内の予想なのかも確かめます。既に確かめた話なら、いつ、誰について分かったことかまで見ます。
次に、その想定と逆のことが分かった場合を考えます。それでも施策が変わらないなら、今回の判断にとって優先度は低いかもしれません。施策をやめる、対象を変える、用意する情報を変えることになるなら、先に確認する理由があります。調べやすさだけで選ばないための基準です。
付箋の文を、そのまま質問しない
「見積もりの後は社内決裁に進む」という付箋を確かめる場面なら、「見積書を上司に見せましたか」では、こちらが想定した行動への答えしか得られません。次の問いは、編集部による質問文の提案です。
見積書を受け取ってから、次にどんなことをしましたか。その後の流れを、順番に教えていただけますか。
相手が話した順序を聞いてから、使った資料、関わった人、止まった場所へ質問を進めます。マップの空欄を埋めるために、話していない感情や理由までこちらで足さない。記憶が曖昧なら、確認できるメールや資料があるかを、無理のない範囲で尋ねます。
一人の答えで、マップ全体を確定しない
聞けた経緯は、その人がそのときにしたことです。社内の想定と違えば、そこを直す材料にはなりますが、ほかの顧客も同じとは決まりません。マップには聞いた範囲を残し、今回の施策を変えてよいか、もう少し確かめる必要があるかを分けて判断します。
顧客の声を施策へ移す際の整理は、顧客の声を経営に活かす方法で扱っています。本稿の役割は、その声を聞く前に、判断を変える質問を選ぶことです。
ブログルへのご相談でも、完成したマップだけでなく、実施を迷っている施策を添えていただくと、先に確かめたい箇所を一緒に整理できます。
付箋に足したいのは、もっともらしい感情の言葉より、「この答えで何を決めるか」というメモです。
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