【Case11:太陽工業×メトロアドエージェンシーの場合】マケシリ〜マーケティング事例に隠された心理効果を知ろう〜
マケシリでは、最近ちょっと気になったマーケティング事例を独断と偏見でピックアップ!
弊社顧問で心理学博士の関屋 裕希さんになぜ気になっちゃうのかを心理学の観点から紐解いていただきます。
広告ってふと目にしますがどの広告もそこに出すためにペルソナをかんがえますよね。
今回は、テント構造物や土木・物流資材を手がける太陽工業と、東京メトログループの広告会社メトロアドエージェンシーは、東京国際大学との産学連携による共同研究を実施し、掲載場所ごとにふさわしい広告内容を検証した事例です。
関屋 裕希 Yuki Sekiya
1985年1月31日生まれ/福岡県福岡市出身
せきや・ゆき/臨床心理士。公認心理師。博士(心理学)。東京大学大学院医学系研究科 デジタルメンタルヘルス講座 特任研究員。専門は職場のメンタルヘルス。業種や企業規模を問わず、メンタルヘルス対策・制度の設計、組織開発・組織活性化ワークショップ、経営層、管理職、従業員、それぞれの層に向けたメンタルヘルスに関する講演を行う。近年は、心理学の知見を活かして理念浸透や組織変革のためのインナー・コミュニケーションデザインや制度設計にも携わる。著書に『感情の問題地図』(技術評論社)など。
ホームページ:https://www.sekiyayuki.com
この研究では、地下鉄を利用する人たちの無意識の感覚に効果的に働きかける広告を検討するなかで、階段を上下する運動がもたらす影響について着目したものです。
調査を通して、階段を昇るとポジティブな「尊い」概念が活性化し、ブランドイメージを高める広告が効果的であるという結果となりました。
一方、階段を降りると「近い」「落ち着き」といった感覚があり、帰属意識を高める広告が効果的で親しみや安心感があるような表現が有効なようです。
これら検証結果を太陽工業が採用し、グローバルな実績写真を活用した「ブランドイメージ」、仕事風景や社員の写真を活用した「帰属意識や親しみ」を促す2種類のクリエイティブ広告を本産学共同研究へ提供しました。
◎階段の上は「ブランドイメージ」、下は「帰属意識」を高めるクリエイティブが有効
階段の上りと下りで広告に対して持つ感情が変化するということは、簡単な例でいうと寒い時に暖かい食べ物や飲み物の広告がふと目に入ってしまうようなイメージと同じですかね?
ーそうですね!寒い時にバス停にそんな広告があったら購買意欲を高められますよね!
他にもからだが重い時や疲れている時に身体が楽になりそうなアイテムの広告を見せることで効果的な場面もありますね。
このように、ネガティブ(疲れた・重い等)=NGではなくネガティブ感情にだからこそ刺さる可能性がある使い方もあります。
広告の作成を掲載するときターゲットの年齢や性別などのいわゆる属性をベースに決めていきますが心理感覚をベースに考えるのってとても奥が深いですし面白いですね!
ー広告って日常の中にあってその人に対してどんなタイミングでその広告と出会うのか、その時の感情状態が社会的判断に影響を及ぼす事を想定するといいですね。
今回の事例はポジティブな感情やネガティブな感情が広告効果に影響がある事が分かったうえでの研究とその結果ということですね!
ーそうですね!当たり前といえば当たり前ですが、ポジティブな感情状態の時にその商品を好意的に 評価する。という心理学的な研究結果もあります。
人がハッピーな感情で見る場所(遊園地や飲食店の外、ショッピングモール等)に広告を設置することで広告効果につながっていきます。
心理学では上記のような研究がありますが、この事例はその一歩先にいく研究で感情の質を分類しています。
ネガティブ(疲れた・重い等)=NGではなくネガティブ感情にだからこそ刺さる可能性がある使い方ですね。
広告を出すにあたってペルソナを立て適切なデザイン、広告方法を考えていく中で見る人の感情状態も要件に含めることでより高い広告効果を望める可能性があることが分かりました。
またその感情もポジティブとネガティブに分かれさらにポジティブを細分化、ネガティブを細分化することで精度を高めていくことができます!
どんなロケーションでどんなタイミングでどんな人がどんな感情状態で見る可能性が高い、目に入りやすいか、まで計算にいれて広告を検討するといいですね!
関屋さん、本日もありがとうございました!