【Case7:FAN-JUMP!バスケットボール教室の場合】マケシリ〜マーケティング事例に隠された心理効果を知ろう〜
マケシリでは、最近ちょっと気になったマーケティング事例を独断と偏見でピックアップ!
弊社顧問で心理学博士の関屋 裕希さんになぜ気になっちゃうのかを心理学の観点から紐解いていただきます。
第7回目は、千葉県船橋市をホームタウンとするプロバスケットボールチーム、千葉ジェッツふなばしが行った勝ち負けを重視しないミニバスケットボール大会「ファンジャンプ!バスケットボールカイエントカップ2023」を深掘り!
甲子園の慶應高校優勝が記憶に新しいですが、スポーツ指導のあり方に少しずつ変化が生まれていると思います。かつてはとにかく長時間活動することや、厳しく教え込むことで上達を図ってきた時代もありましたが、今を生きる中学生や高校生はどのような心理で部活動に励んでいるのでしょうか?
関屋さんとともに考察してみます。
関屋 裕希 Yuki Sekiya
1985年1月31日生まれ/福岡県福岡市出身
せきや・ゆき/臨床心理士。公認心理師。博士(心理学)。東京大学大学院医学系研究科 デジタルメンタルヘルス講座 特任研究員。専門は職場のメンタルヘルス。業種や企業規模を問わず、メンタルヘルス対策・制度の設計、組織開発・組織活性化ワークショップ、経営層、管理職、従業員、それぞれの層に向けたメンタルヘルスに関する講演を行う。近年は、心理学の知見を活かして理念浸透や組織変革のためのインナー・コミュニケーションデザインや制度設計にも携わる。著書に『感情の問題地図』(技術評論社)など。
ホームページ:https://www.sekiyayuki.com
本日は千葉ジェッツふなばしが行った勝ち負けを重視しないミニバスケットボール大会「ファンジャンプ!バスケットボールカイエントカップ2023」についてです!
私は中学時代(約15年ほど前)にバレーボール部に所属していました。校内でも随一の顧問が厳しい部活で、とにかく耐えることで強くなるという雰囲気でした。バレーボールは大好きでしたが、部活動は大嫌いでした。笑 厳しさの中で、技術の上達はもちろん、人間関係や礼儀のようなものを教えてもらったという点では、良い経験だったとも感じます。。
関屋さんはこのイベントの記事をご覧になって、どのように感じました?
ー時代の変化を感じました。”ハラスメント”や”コンプライアンス”といった、かつては馴染みのなかった言葉たちが当然のように使われるようになり、みなさんがセンシティブになっていますよね。
かつての部活動=厳しいものというイメージが根強い世代からすると戸惑う方も多いと思うのですが、部活での体罰問題などが問題視され、法やルールの整備が進んだことは良いことだと思います。
厳しい環境でこそ身につく忍耐力や競争力などもあるかと思いますが、どう思いますか?
ーそういった厳しさのメリットももちろんあるかとは思いますが、ただ”ゆるい”や”楽をする”ということではなく、活動を行うことの目的を明確にしてあげることが重要だと思います。
このミニバスケットボール大会の場合、「競技の楽しさやチームプレーの大切さを知ってもらいながら、自主性を育む」という明確な目的が掲げられています。厳しい環境を避けたいからといって、ただただ無目的に取り組むということでは、お子さんも親御さんも満足できないと思います。このように目的を掲げ、その目的に向かって活動し、達成できることによって、競技自体の魅力にも繋がっていくと思います。
監督やコーチが怒ることやタイムアウト・ハーフタイム以外のベンチからの指示を禁止し、子どもたちの自立を促すという特徴も面白いですね。
ーそうですね!監督やコーチから怒られないために頑張るというのは言ってみれば、罰を避けるために行動することであり、ポジティブなモチベーションとは言えないですよね。
競技や活動に励むための動機付けの方法もいくつかあります。内発的動機付け/外発的動機付けが企業での人事でも参考にされることが多いです。
外発的動機付け:報酬や評価、罰則や懲罰といった、外部からの働きかけによる動機付け
内発的動機付け:物事に対する強い興味や探求心など、人の内面的な要因によって生まれる動機付け
怒られないように…と取り組むことは外発的動機付けに該当します。競技そのものが好きで取り組んでいることは内発的動機付けに該当します。外発的動機付け/内発的動機付けのいずれかが良くて、いずれかが悪いということはなく、各個人に合った動機付けの方法で取り組むということが大切です。
こちらの大会は怒られるという経験で競技自体の魅力を損なうことなく、自分たちで考えて動くという達成感も味わうことができるため、子供たちにとってバスケットボールとの良い接点となると良いな、と思いました。
ですね、スポーツに限らず、社会に出てからも自分に合った動機付けの方法で取り組むということが重要だなぁと思いながらお伺いしていました。
動機付けの方法はさまざまですが、自分に合った方法で競技や活動を”楽しむ”という方向に向かって取り組むことができたら良いな、と思います。
関屋さん、本日もありがとうございました^^